文字を覚えて、「夕やけがうつくしい」
地球市民事業課の市川です。
今年から大学で「ボランティア論」を教えています。いろいろな切り口でボランティアを考える話題を話し、時にはグループで議論する場とします。先日、前期最後の授業で「識字とボランティア」を取り上げました。
「夕やけがうつくしい」を読んで
最初に何も説明せずに、この詩を読んでもらい、「疑問に思ったこと、知りたいことを出し合ってください」とグループディスカッションの場としました。最初は、「5歳児が書いたかな?」「文法がおかしいし、内容がわかりずらい」というネガティブな反応ばかりでした。そこで、この詩を書いた北代色さんについて話しました。四国の漁村で生まれの北代さんは、家が貧しく小学校すら行けず、ひたすら働いたこと。ようやく識字学級に行き文字を学び、70歳の時に友人に書いたのが、この手紙だったこと。そして、この手紙は、全国の識字学級から反響があり、多くの識字学級で教材として、使われていることを話しました。
シャンティが阪神淡路大震災後に支援した識字学級「ひまわりの会」
非識字者の背景にあった社会問題
そして、その後、『文字を覚えて夕焼けが美しい』という”識字と人権”を扱ったドキュメンタリーを観ました。非識字者の社会的背景が、戦前戦後に来日した在日韓国朝鮮人の人々、そして、被差別部落に生まれ育ち、そのために社会的な差別を受け、貧しさゆえに学校に行けなかったことを伝えました。
識字学級「ひまわりの会」の様子
今の日本でも機能的非識字者の課題がある
さらに、こんにちにおいて、非識字の問題は、日本でも決して過去のことではないこと。2017年に実施された学力調査(平成29年度 全国学力・学習状況調査)では、「中学3年生の約15%は、 主語が分からないなど、文章理解の第一段階もできていなかった」が報告されています。文字が読めて文章が理解できないことを「機能的非識字」と言われていますが、日常生活の危機に気づかなかったり、思考が浅くなるなどの問題的に指摘されています。
識字学級「ひまわりの会」の学習者の作品
「文字を覚えることは人生が拓けるんですね」
後日、学生からのリアクションペーパーを読みましたが、識字とその背景の社会課題には、かなり驚きがあったようで、「文字が書けることがありがたい」「北代さんが何十年も文字が分からないまま生きた人生はどんなに辛かったのだろうか?」など、様々な意見が寄せられました。そして、ある学生がこんなことを書いてくれました。
「文字を覚えることは、人の感情を豊かにするんですね。文字が書けるようになって、本当の意味での人生を過ごせるようになったことは素敵だと思います」。