ミャンマー国境支援事業事務所(通称:MBP事務所)が始動しました!
ミンガラバ。
ミャンマー国境支援事業事務所の所長となりました中原です。2014年から約5年間、ミャンマー事務所の所長として従事してまいりましたが、2019年よりミャンマー・カレン州にあるパアンに拠点を移しました。
ミャンマー国境支援事業事務所(Myanmar Border Project Office:通称 MBP事務所)として、はじめましてのご挨拶と、MBP事務所が設立された背景、事務所の組織体制、支援予定地の状況をご紹介いたします。
ミャンマー・カレン州の州都パアンに設立されたMBP事務所の外観
事務所設立の背景
ミャンマーと国境を接するタイ側に難民キャンプが開設されてから約40年が経ちましたが、近年ミャンマー政府と少数民族との全土停戦協定が結ばれたことを受け、難民の帰還が始まっています。しかし、何十年も難民キャンプで暮らしてきた人々がミャンマーへ帰ったとして、住む場所や仕事を見つけることは容易ではありません。そのため、ミャンマーへ帰還をためらっている状況があります。そこで、帰還予定先の村の生活環境を整えようと、いくつかの組織や団体がミャンマー政府と協力して支援活動を行ってきました。そして、シャンティもカレン州において復興・再定住支援事業を行うこととなりました。
ミャンマー国境支援事業「組織体制」
シャンティは2000年からタイ・メーソットにミャンマー(ビルマ)難民事業事務所(Myanmar [Burmese] Refugee Camp Project Office:通称 BRC事務所)を構え、タイ側にある難民キャンプで支援事業を行ってきました。そして、ミャンマーへ帰還する難民の支援は、帰還元となる難民キャンプ(タイ)と、帰還先であるカレン州(ミャンマー)の双方から行うことが望ましいと考え、新たにカレン州の州都パアンにミャンマー国境支援事業事務所(MBP事務所)を設置し、BRC事務所と連携してミャンマー国境支援事業を実施してまいります。
ミャンマー国境支援事業「事業対象地」
今年度の事業対象地は以下の2つの村を予定しています。
【レイケイコー村】
カレン州の主要都市ミャワディから車で40分ほどの距離にあります。目立った産業はなく、住民は農業や隣国タイへの出稼ぎなどで生計を立てています。約800世帯3,300人が暮らし、うち約100世帯400人が難民キャンプからの帰還民です。村の人口の約12%を占めます。今後も帰還民を受けいれる予定で、住居の準備などが進められています。
レイケイコー村の様子
【ゾーズィーミャイン村】
ミャワディから車で90分ほどの距離にあります。レイケイコー村と同様に、住民は農業やタイへの出稼ぎで生計を立て、約190世帯700人が暮らしています。まだ難民キャンプからの帰還民は到着していませんが、受け入れの具体的な計画があり、住居の準備などが進められています。
ゾーズィーミャイン村のトウモロコシ畑
両村とも帰還民の受け入れに積極的で、人口増加が予想されています。しかし、新たに定住する国内避難民や帰還民がホストコミュニティとともに活動する場がなく、言語や文化継承の課題も抱えています。そこで、シャンティは2村の住民が日常的に集える場所としてコミュニティリソースセンター(通称 CRC)の建設支援を行います。
CRCでは、図書館やコンピューターを設置し、地域イベントの開催や各種研修の実施を通じて、住民が一体となって参加できる場、情報収集できる場づくりを目指しています。
タイとミャンマー、両方から見てきた人々と共に
私は2001年から2007年までの約6年間、タイ国境にあるミャンマー(ビルマ)難民キャンプで図書館活動に関わらせていただきました。キャンプに住む人々を通じて、タイ側からミャンマーを見ていました。いつになったらミャンマーは民主化して平和な国になるのだろう、キャンプに住む人たちが一刻でも早く帰還できる日を願っていました。2014年にシャンティがミャンマー本国での事業を開始し、自身も関わることになると分かった時、帰還が開始たならば、シャンティとして必ず支援しなければならないと自分に誓ったことを覚えています。
ミャンマー国内で事業を始めるにあたり、まずはシャンティの実績や基盤作りを行う必要があるとバゴー地域における活動に専念してきました。この間、ミャンマー政府とも良好な関係構築ができたかと思います。そして今回、新たにカレン州に拠点を置き、ミャンマー国内でより幅広く活動を行う時となりました。
これから支援を行っていく村々は難民だった人たちが帰還し、生活を始める地域です。一方、そこには以前から住んでいる人たちもいるため、既存の住民と帰還民の共存がとても重要なテーマになってきます。帰還民だけに集中するのではなく、もともと住んでいる人々やミャンマー側に残っていたカレン民族を含め、どのように支援事業を展開していくのか、大変難しい取り組みになるかと思いますが、できる限り、皆さんの声にしっかりと耳を傾けて、同じ目標に向かっていけるよう努力していきます。それが長期的に見てカレン州、ひいてはミャンマー全体の平和構築、発展につながっていくことだと信じています。
本事業はまさに開始したばかりの新たな試みですが、これからスタッフと共に協力しながら日々取り組んでまいります。どうかよろしくお願いいたします。
ミャンマー国境支援事業事務所
所長 中原 亜紀
※本事業は外務省による資金援助および日本財団とのパートナーシップに基づき実施されています。