2016.02.05
海外での活動

今、ミャンマーで思うこと

ミャンマー

ミンガラバー。ミャンマー事務所の中原です。

ミャンマー事務所が開設されてもうすぐに2年が経とうとしています。この間、ミャンマーでは民主化に向けた動きが加速化し、これからこの国は大きく変わっていく、それは間違いないと思うのですが、どんな風に変わっていくのだろうかと考えてしまいます。

今週2月1日、昨年11月の総選挙結果に基づく新議会が開会しました。まずは下院、続いて上院と開かれ、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)所属議員が両院で議長に選出されました。ちなみに上院の議長はカレン族、副議長はラカイン族出身。新政権として少数民族和平を最優先課題として掲げていることが背景にあるようです。

経済成長、インフラ整備なども優先課題として上げられていますが、どれにおいても不可欠なのは「人材」ではないかと私は思います。つまり「人づくり」です。どんなに立派な政策を掲げても人材の確保ができなければ課題は解決できません。そして人づくりのために必要なことは何かと言えば「教育」だと思います。ここで言う教育は学歴といったことではなく、考える力や想像する力をどう身に付けるかということです。

ミャンマーの人たちと仕事をしていると彼らの真面目さ、勤勉さによく驚かされますし、また潜在能力の高さも伺えます。ですがこうした力を培うための教育が十分に施されてきていないことをミャンマーの人たちと接する中で痛感することがあります。そこにはミャンマーの高等教育機関の歴史そして教授法などが起因しているだろうと思います。

前者についてご存じの方も多いと思いますが、1988年の学生民主化運動以降、全ての大学が10年もの期間、閉鎖されていました。90年代に入り、再開した大学もあったようですが、96年と98年に起きた学生ストライキによって再度の閉鎖となり完全に再開されたのは2000年でした。高等教育の機会が長く閉ざされていたことは、国にとってそして人づくりにとって大きな損失になったと思います。

事務所があるピー郡にあるピー国立大学。

事務所があるピー郡にあるピー国立大学。

教授法については、教員の質問に対して生徒が答えるというのが伝統的なやり方です。教員が一方的にしゃべり続ける、教科書の暗唱を続けるといった授業が多く、子どもたちが自由に考えて発言するといった機会がほとんど与えられていません。

今すぐに高等教育機関の充実を図る、教授法も児童中心のやり方にする、というのは難しいことです。そのため草の根レベルでの教育支援の取り組みの必要性が一層高まってくることだと思います。ミャンマーで実施しているシャンティの支援活動もその一つです。絵本を通じて思考力や想像力を高め、図書館での仲間との遊びを通じてコミュニケーション能力を身に付け、積極的に意見を口にするようになった、と図書館で児童サービスを開始してから徐々にですが子どもたちの変化が見られてきています。人づくりには膨大な時間を要しますがこうした変化を目にし、シャンティの教育活動の意義を改めて感じてきています。

絵本に夢中になっている子どもたち

絵本に夢中になっている子どもたち

ミャンマーの未来を担う子どもたちへの教育支援の必要性をもっと多くの方々に伝えていかなければならないと思います。

ミャンマー事務所 中原