「死ぬ前に、名前が書けるようになりたい」―ネパール・山岳地域の識字教室から
みなさま、こんにちは。ネパール事務所の萩原です。
先日、コミュニティ図書館・リソースセンターが実施する識字教室のモニタリングに行きました。識字教室は図書館のアウトリーチ活動として実施しています。この日訪れた識字教室が位置するのは、街の中心部から車で3時間の山岳部の村。道中、障害物を脇によけながら進みます。

到着した村の一角にて。ネパールの少数民族、リンブーの人たちが多く暮らしています。

村に到着し、さっそく識字教室へ移動すると、わき目もふらず、一心不乱に文字の練習をする識字教室参加者の姿が飛び込んできました。



外国人の私含め、シャンティの職員が事業地を訪問すると、「なんだなんだ?」と参加者が顔を上げることが実は多いのですが、今回はそんな素振りすらありません。「かじりつくように学ぶ」という言葉の意味がそのまま目の前に現れたようでした。
教室がひと段落したところで、識字教室の参加者の方に話を聞いてみました。

家庭の事情で若くして結婚し学校を辞めてしまったため、文字の読み書きを忘れてしまったというビマ・クマリさん。なぜ識字教室への参加を決めたのか尋ねてみると、「文字の読み書きができないために、『自分は人間ではない(人間として価値が無い)』と感じていました」と言います。
「書類に記入したり、簡単な計算をしたりするだけでも、他の人に依存するしかありません。文字の読み書きができないために、苦い思いをたくさんしてきました。」
多くの村人が、文字の読み書きができないために、銀行で金額を確認したり「自分の名前」でお金を受け取ったりできないといった苦労をしてきたといいます。「他の人に頼ることなく、自分の名前できちんとお金を受け取り、管理するという尊厳が、私たちは欲しいのです。」
「識字教室に通えることをうれしく思っています。まだ完ぺきではありませんが、少しずつ読み書きができるようになり、役所や病院や銀行の手続きなど、日々の生活がしやすくなってきました。文字の読み書きができないということは、誰かに頼らなければならないということ。でも、私は自立したい。そのためにも学び続けたいと思っています。」

こちらの女性は識字教室で講師を務めるウニタさん。ネパール語で授業を行うそうですが、リンブー語のほうが得意な参加者もいるので、時にリンブー語も交えて教えるといいます。
「村の人たちはこれまでにも『文字を学びたい』と話していました。中には、『死ぬまでに自分の名前を書けるようになりたい』と言う人もいます。村の人たちが文字の読み書きができるようになるのを助けることができ、とてもうれしく思っています。」

村の訪問後、「これからも学び続けたい」という参加者の声を受け、一緒にモニタリングに訪れたコミュニティ図書館・リソースセンターの運営委員長とも協議し、識字教室を2か月間延長することを決めました。
シャンティは現在実施中の事業で、同様の識字教室を計15か所で支援してきました。シャンティによる事業はまもなく完了しますが、図書館・リソースセンターの運営委員長は、「支援が終了した後も、この教室が続けられるよう資金を確保する」と話しています。
各地で蒔いた学びの種が各地で育っていくよう、運営委員会の皆さんや自治体関係者などとの調整を進めていきたいと思います。
本事業は日本NGO連携無償資金協力事業として、日本の皆様のご支援で実施しています。
ネパール事務所 萩原



