2026.03.18
開催報告

【国内事業報告会】地域での多文化共生を考えるinねりま~「ねりんく」での取り組みを振り返って~

イベントレポート
国内事業

地域でたくさんの外国ルーツの人々が暮らす今、シャンティでは地域の方々と協力して、ともに安心して暮らせる地域を目指し、取組みを進めています。
2021年から豊島区で外国ルーツ住民支援プラットフォーム「としまる」の活動を開始し、2024年からは、練馬区での「ねりんく」が始動しました。

活動を積み重ねてきた中、これまでを振り返り、

報告会「地域での多文化共生を考えるinねりま~『 ねりんく』での取り組みを振り返って~」

を2026年1月16日に開催しました。

わたしたちが支援を行うなかで、現場で見えてきた課題や実践の工夫をお伝えし、そして地域の中で外国人住民とどのように関わりを築いていけるかを一緒に考える機会になりました。

■イベント概要

【開催日時】2026年1月16日(金)17:30-19:30 
【会場】練馬区役所本庁舎20階 交流会場(東京都練馬区豊玉北6-12-1)
【参加者】55名

■当日の様子と抄録

1. 開会のあいさつ
公益財団法人 日本国際交流センター チーフ・プログラム・オフィサー  李惠珍(イ・ヘジン)氏


開会のあいさつの様子。多くの方が足を運んでくださいました。

2. 基調講演 「練馬から考える市民活動と多文化共生」
特定非営利活動法人 国際活動市民中心(CINGA) コーディネーター 新居みどり氏

皆様こんにちは。本日はお越しいただきありがとうございます。 練馬区は東京都内でもいち早く多文化共生の領域を講座に取り入れてくださいました。私はコーディネーターとして、15年以上にわたり、年に一度ここで多文化のお話をさせていただいております。

今日、少し早めの4時半に会場へ到着し、夕日が沈むのを眺めていました。すると観光客の方が多く来られており、わずか30分の間にロシア語やフィリピンの言葉が聞こえてきました。お子さんが「あれが富士山だ」と話しているのが、言葉はわからずとも伝わってきて、大変嬉しく思いました。

今日は、市民活動と多文化共生について「ネイバー(隣人)」の視点からお話しします。私の所属する「国際活動市民中心(CINGA)」は、もともと武蔵野市の国際交流協会から始まり、市民同士のつながりから立ち上がった組織です。

現在、日本には約395万人の外国籍の方が暮らしており、間もなく400万人を超えようとしています。3年間で100万人以上増えている計算です。これは島根県と鳥取県の人口を合わせた数よりも多い人々が、新しく入ってこられたということです。

私たちは行政の方ともよくお話をしますが、外国人・日本人と簡単に分けられるものではありません。地域住民として共に暮らしている以上、外国人だからといって権利を制限したり、サービスから除外したりすることはできません。基礎自治体である練馬区は、いわば移民政策の最前線に立っているのです。

練馬区の外国人比率は4.12%と、都内では決して高くはありません。しかし、年齢構成を見ると20代・30代が圧倒的に多い。新宿区では新成人の50%が外国人というデータもありますが、日本全体でも20代の10人に1人は外国人という状況です。さらに、家族の帯同権によって、今後は子どもたちの数も増えていくでしょう。

外国人支援の現場には「在留資格の壁」「言葉の壁」「心の壁」という3つの壁があります。例えば、民生委員の方から「言葉が通じず困っている親子がいる。高校進学についてどこに相談すればいいか」といった電話をいただくことがあります。福祉や援助の現場にいる方々が、外国籍の方と出会ったときにフリーズせず、専門職と連携して壁を超えていくことが、今まさに求められています。

 

3. 事例報告「練馬/豊島での取り組みを振り返る~ねりんく/としまる参加団体から~」
練馬区社会福祉協議会/東京パブリック法律事務所/豊島区民社会福祉協議会/シャンティ国際ボランティア会

「ねりんく/としまるの事業概要」 シャンティ国際ボランティア会 

2021年に開始した豊島区での「としまる」には、2025年末までにおよそ1,800名、2024年に開始した練馬区での「ねりんく」には120名の外国人住民の方が、相談に訪れています。

これまでに60回以上開催した「フードパントリー・相談会」や「としまる相談窓口」、個別支援など、様々な支援を多様な団体との連携のなかで行っています。
連携により、多くの団体の「得意」を最大限に生かした支援を行うことができました。

豊島区での取り組み ~社協の視点から~」
社会福祉法人豊島区民社会福祉協議会 田中慎吾氏 

豊島区民社会福祉協議会からは、外国人支援を社協の視点から語っていただきました。

地域に住む“生活者“としてサポートする意識の変化など、「としまる」の取り組みを通して、社協にも様々な変化があったとのことです。

「練馬区の現状と支援の現場から」
練馬区社会福祉協議会 練馬ボランティア・地域福祉推進センター所長 相馬文子氏・東京パブリック法律事務所 弁護士 野原郭利氏

練馬区の特徴は、ボランティア活動が非常に盛んな点です。特に日本語教育や子どもの支援、そして長年続いている語学ボランティアの派遣体制は素晴らしいものです。

一方で、2020年からのコロナ禍は大きな転換点でした。生活サポートセンターへの外国人相談は、以前は年間10件にも行かない程度で、外国人の生活課題を考えることはそれほど多くありませんでした。しかし、2021年、外国人からの相談は470件に急増しました。生活サポートセンターが受ける相談の全体の13%が外国人からという状況になりました。区内の人口の4%が外国人ですが、それに比べて困窮の窓口に来る割合の方がずっと多いというのは一つ言える状況でした。コロナによって、不安定な状況で暮らしていた外国人の方の状況が可視化されたのです。生活に困窮する方が窓口に殺到、電話が鳴りやまない状況の中、言葉の壁がまず大きくありました。当時は外国語のコミュニケーションツールもほぼなく、英語を話せる職員も少ない中、支援をしていました。それから、在留資格への理解も壁になりました。生活困窮の窓口であらゆる支援をしても手立てがないときに、生活保護制度を案内する、つないでいくのは大事な役割ですが、在留資格を学ぶ機会は十分にありませんでした。

例えば、夫からDV被害を受けた外国人女性が、失踪した夫を残して小学生の息子と二人で途方に暮れていた事例がありました。女性は日本語が話せず、息子さんの同級生のお母さんが一緒に電話をかけてきました。私たちは在留資格の知識が乏しく、当初はどう支援すべきか愕然としましたが、東京パブリック法律事務所などの専門家と連携することで、一つずつ事例を積み上げてきました。

ある技能実習生として来日した女性のケースでは、妊娠により学校の継続が困難になりましたが、「日本で子育てをしたい」という強い希望がありました。私たちは保健師や保育園と連携し、出産から育児、そして彼女が介護福祉士の資格を取得して就職するまでを伴走支援しました。彼女は今、地域社会の立派な構成員として、自分の足で立ち上がっています。

こうした支援は、公的な制度だけでは解決できません。本人のニーズとリスクを正確に把握し、福祉と法、そして地域が連携し続けることが不可欠なのです。

 

  1. 当事者・ボランティアからのメッセージ

最後に、「ねりんく」に来場したある外国人の方からのメッセージが代読されました。

今日は皆さんに心からの「ありがとう」を伝えたくて、このメッセージを書きました。

私にとって、2020年から2024年にかけては、精神的にも肉体的にも、そして経済的にも本当に苦しい時期でした。そんな時、フードバンクで相談会の情報を偶然見つけました。「医療の相談やビジネスの再建のヒントが得られれば」という思いで、会場に向かいました。

2020年のあの日、私の気持ちはかなり沈んでいました。その場では、専門家の方からすぐに直接的な解決策(アドバイス)をもらうことはできませんでしたが、あの日、私はそれ以上に大切なものを受け取りました。

それは、「あたたかい眼差し」です。その優しさに触れたことで、私は「一人じゃない」と感じることができました。暗闇の中で動けなくなっていた私に、そっと手を差し伸べてくれた。そのことに心から感謝しています。

皆さんのおかげで、私は希望を取り戻すことができました。そして、「いつかまた立ち上がれた時には、今度は私が誰かの力になりたい」と思うようになりました。

実は一年ほど前から、ボランティアセンターを通じて、生きづらさを抱えた若者に英語を教える活動を始めています。「誰かの役に立てれば」と思って始めたことでしたが、彼らの成長を見ることは大きな励みになっています。街中でばったり彼らに会うと、声をかけてくれるのですが、そうした繋がりが増えたことは、私にとって大きな喜びです。

最後に、今日ここに集まっている皆さんにお願いがあります。 どうか、周りの人に自分から声をかけたり、挨拶を返したりしてみてください。

アメリカでは、すれ違う時に目が合えば、ニッコリとして軽く挨拶をします。日本でも、山登りでは知らない人同士が自然に「こんにちは」と言い合いますよね。あれが街の中でもできたらな、と思うのです。そうすれば、もっと住みやすい地域になるはずです。

実は、私もとてもシャイなんです。でも最近は、勇気を出して「こんにちは」と声をかけるようにしています。シンプルな挨拶の先には、困った時に助け合える「ご近所さん」としての関係があると信じているからです。

私も頑張りますので、皆さんも一緒に「こんにちは」を広げていきませんか。一緒に住みやすい練馬を作っていけたら嬉しいです。

「2020年から2024年にかけて、私は精神的にも経済的にも非常に苦しい時期を過ごしました。しかし、偶然見つけた相談会で皆さんに手を差し伸べてもらったことで、『自分は一人ではない』と感じ、希望を取り戻すことができました。今はボランティアとして若者に英語を教える活動を始めています。皆さんも街で外国人と目が合ったら、軽く挨拶をしてみてください。そのシンプルな『こんにちは』の先に、助け合える関係があると信じています。」

最後まで聞いてくださって、ありがとうございました。

また、練馬区内で子どもの日本語学習支援を行っているボランティア団体からも報告がありました。現在、桜台と東大泉の2箇所で教室を運営していますが、場所不足が大きな課題です。練馬区は広いため、電車やバスを乗り継いで通う子も多く、もっと身近な場所に支援の場を広げていく必要があります。

4. むすびに

多文化共生とは、特別なことではありません。偏見や差別を乗り越え、共にバレーボールを楽しんだり、挨拶を交わしたりする。そうした「顔の見える関係」を地域の中に作っていくことが、誰もが暮らしやすい練馬区の未来につながります。ご清聴ありがとうございました。

シャンティでは、これからも地域での連携を生かし、外国ルーツの方々とともに、多文化共生の地域づくりを目指した取り組みを続けていきます。
今回の報告会を一里塚として、今後もよりよい支援のかたちを模索していきます。

【共催】
公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 社会福祉法人練馬区社会福祉協議会 弁護士法人東京パブリック法律事務所
社会福祉法人豊島区民社会福祉協議会 特定非営利活動法人国際活動市民中心(CINGA)
公益財団法人日本国際交流センター(JCIE) 特定非営利活動法人ジャパン·プラットフォーム(JPF)

このイベントは休眠預金を活用して実施しています。

休眠預金等活用事業 2022年通常枠 「アウトリーチ手法による外国ルーツ住民の自立支援」
資金分配団体:公益財団法人日本国際交流センター(JCIE) 特定非営利活動法人ジャパン·プラットフォーム(JPF)