• TOP
  • トピックス
  • イベント情報
  • 【開催報告】オンラインイベント 「アフガニスタン支援の“今” ~現地女子教育と国内避難の現状~」
2022.06.09
開催報告

【開催報告】オンラインイベント 「アフガニスタン支援の“今” ~現地女子教育と国内避難の現状~」

アフガニスタン
イベントレポート

今年の8月でタリバンがアフガニスタンを実効支配してから1年が経ちます。それに先立ち、アフガニスタン ワーキンググループ(JANIC)主催の、オンラインイベント「アフガニスタン支援の“今” ~現地女子教育と国内避難の現状~」を開催いたしました。

 

【アフガニスタン ワーキンググループについて】

本イベントの主催である、アフガニスタンワーキンググループについて簡潔に説明させていただきます。

本ワーキンググループは、2021年8月のタリバンのアフガニスタンでの実効支配による情勢の急変を受け、同年10月に設立されました。本グループ設立目的は、アフガニスタン国内で生活に困窮している人びとへの支援、また日本に退避して来た人への支援に繋がる情報共有や多様なセクター間での連携の場の提供としています。現在、22の組織、47名が本グループの参加メンバーが加盟しております。

今回のイベントには、本グループのメンバー団体でもある「教育協力NGOネットワーク(JNNE)」から、事務局次長の小荒井さん、また「パスウェイズ・ジャパン」の代表理事を務める折居さんが登壇者として参加いたしました。さらに、今回は、長年アフガニスタンの支援に携わる、「アドラ・ジャパン」から杉本さんにもご登壇していただきました。シャンティからは、山本事務局長がパネルディスカッションの進行役として、参加いたしました。

 

以下、それぞれの登壇者の発表内容を報告させていただきます。

 

【「アフガニスタンにおける女子教育支援 現状と課題」アドラ・ジャパン:杉本さん】

アドラ・ジャパンの杉本さんには、「アフガニスタンにおける女子教育支援 現状と課題」について、現地での経験を踏まえた知見を共有していただきました。

アドラ・ジャパンはカブール市とバーミヤン州で2002年のBack To Schoolキャンペーン以降から教育を中心とした支援を行っております。

女子教育の課題として、学校環境の問題(男子校やテントで授業を受けている、トイレや給水施設がない、3キロ以上離れたところから生徒が登校している等)が挙げられます。その課題に対して、学校建設、井戸堀削、図書室・トイレ・校庭の設置等を行っています。また、学校の維持管理能力を上げるために、教師や司書(特に女性職員)のトレーニングも行っています。その中で見えてきたことは、女性の研修講師を配置することで、女性の教師や職員がトレーニングを受けやすい環境を整えることができるということです。さらに、それが持続的・効果的な女子教育へと繋がります。

このように教育、特に女子教育の質・環境・安全を確保する支援を継続することで、教育の向上や自立発展性に貢献してきました。

しかし、2021年の政変後から、支援をしていた学校でどんどん生徒数が減少しているという現状があります。

一つの学校では生徒の登録者数1530人に対して、1058人しか通学していないというデータがあります。また、バーミヤン州教育局は閉校した女子中学と高校の開校時期が特定できず、その間、女子生徒は自宅で時が過ぎるのを待っているだけ、という状態が続いています。

 

【「アフガニスタン教育分野における日本の役割と政府への期待」教育協力NGOネットワーク(JNNE):小荒井さん】

続いて、JNNEの小荒井さんに2002年以降のアフガニスタンの復興プロセス、そして政変後における、日本政府のアフガニスタンへの教育支援の変化の動向と、その内容を踏まえた日本政府への提言を発表していただきました。

 

2001年末に発足した当時のアフガニスタンの暫定政権は、教育(特に女子教育)を復興プロセスの6つの重点分野の一つとし、日本のアフガニスタンへの復興支援においても教育が重点分野の一つと位置付けられました。2002年~2020年までの入手可能なデータ(4-5年毎の平均)によると、日本の対アフガニスタン教育分野開発援助(ODA)の平均額は、G7諸国の平均額を下回りますが、順位ではアメリカ、ドイツに次いで2位、3位の時期もありました。ODAに占める教育援助額の割合に関しては、平均して6%~8%とG7諸国平均を上回っている時期が多いです。また、日本のアフガニスタンへの教育援助で特徴的なのは、2002年の復興初期から、小中学校レベルの教育や成人の識字教育などを含む、基礎教育に力を入れてきたというところです。

具体的な日本の教育支援活動としては、国連機関を通じた支援(子どもの就学支援、若者・成人・警察の識字教育等)のほか、国際協力機構(JICA)が、アフガニスタン政府・教育省の能力強化を目的として、たとえば学校教員のガイドラインを作成し研修を行ったり、識字教育についてのモニタリングや学習者の達成度評価などを教育省が適切に実施できるよう、ガイドラインの開発や全国規模での教育省職員の研修等の支援を現地政府とともに行いました。また、NGOもそれぞれの得意分野を活かした活動(地雷回避教育、図書館活動、子どもの就学支援、インクルーシブ教育、成人識字教育等)を行ってきました。このように、日本は多様な実施機関を通じて多岐にわたる教育支援を行てきたのです。日本を含む国際社会の支援の結果として、2001年以前は90万人に留まっていた就学者数が、2018年には1000万人(4割が女子)程度、さらに女性の識字率も17%から29.8%向上しました。しかし一方で、不就学児童が370万人以上(6割が女子)、非識字者は1200万人以上(6割が女性)いて、政変前もまだまだ教育支援が必要な状況がありました。

 

昨年の政変以降、日本のアフガニスタンへの教育支援は限られてしまっています。

たとえば、2021年の10月に発表された、様々な分野における国際機関を通じた6500万ドルの緊急無償資金協力には、教育分野の支援も含まれますが、全体の中の一部の支援となっています。令和3年度の補正予算は、他分野の一部に教育に関する活動が含まれるとのことですが、限定的です。日本の外務大臣は、2022年の3月と5月にG7を中心とした外相等と共に、女子の中等教育が再開されていないこと、女性・女子の権利制限懸念の共同声明を出していて、この点は評価できるものの、教育支援の実績としては実際に十分な支援にまでは至っていない現実があります。

 

この現状を受け、日本政府に対する4つの提言を挙げました。

まずは、これまで日本の経験や実績を活かした多様な教育ニーズ(子どもの就学、若者・成人の識字、図書館活動、地雷回避教育等)に対応した支援の実施です。また、政変後のアフガニスタンの教育の復興と維持のためには、初頭・中等教育、コミュニティにおける教育、識字教育、就業技術教育、高等教育の分野において、今後2年間で15億ドル強がアフガニスタン教育セクターの暫定枠組みとして必要とされています。日本政府はその支援の実施のために、ドナー調整枠組みに参加し、効果的な支援・拠出を行うことが期待されます。他にも、教育支援といっても多様なニーズが広範囲の地域で存在しております。それをカバーするためには、国連機関のみならず、日本のNGO、多国間教育基金(「教育を後回しにはできない基金(ECW)」と「教育のためのグローバル・パートナーシップ(GPE)」を通じた多角的な教育支援が必要です。最後に、日本政府はアフガニスタンへの教育支援(金額、内容、実施機関等)についての情報公開をして、日本の役割・貢献を明確にしていってほしいと思います。

 

【「アフガニスタンからの退避の現状と今後に向けた提言」パスウェイズ・ジャパン:折居さん】

最後に、政変を受け、日本に退避してきたアフガニスタン人の調査を行っている折居さんに、その調査から得られたデータと、また、聴き取りによって得られたアフガニスタンの方々の声を紹介していただきました。

はじめに、退避の状況といたしまして、現在も退避が続いています。毎週のように大学や関係機関に日本にアフガニスタンから退避できないかという相談が届いています。

退避して来た人のかなには、全財産を使うほどの過剰な経済負担をして渡航やビザの取得をしている方々がいらっしゃいます。退避者の中には、例外的に安定した仕事を得られた人もいますが、ほとんどの方が、雇用口を見つけるのが困難な状況にいます。命を守るために日本に避難したのに、退避後も非常に厳しい生活を強いられています。

こういった背景を受け、日本への退避後の生活と今後の見通しについての調査を行いました。

今回本調査に参加していただいた回答者の背景として、約7割が民間招へい、3割がJICAや政府招へいの方々でした。退避前の職業の55%が公務員、さらに18%が大学教員という、高学歴の方が多いという特徴が伺えます。

回答者のうち、62%の方が日本での定住を希望しており、第三国への定住を希望する人が25%です。また、日本への定住を希望する人のうち、就労を希望する方が63%、大学・大学院への進学を希望する方が15%という結果が得られました。

「現在、大学から技術職員として招かれていますが、3月末で契約が終了し、その後、どこでどのように生活していけばよいのか、全く分からない状態です。研究生として勉強を続けるつもりですが、仕事もお金もない状態では、妻や子供たちの生活をまともに支えていくことは本当に難しいでしょう。」

 

このように、日本に退避した後も、将来への不安を抱えた状況のなか、生活を送っています。こういったなか、自国へ帰ることもできず、もし帰国しても、その際には「迫害」を受ける恐れがあります。今回の調査でも95%の方が帰国をしたら迫害を受ける可能性があると回答しております。その理由として「非イスラム国の日本等との繋がりがある」「旧政権の公務員であった」「教育を受けて働いている女性である」そして「民族的宗教的マイノリティ」であることが多く挙げられました。

「過去十数年にわたり、日本の複数の国立大学にて研究活動を続けた後、アフガニスタンに帰国し大学で勤務していた。しかし、私の論文にはアフガニスタンの伝統的な考え方と異なる内容が含まれているとタリバンから警告を受けた。彼らは私の家まで私を探しにやってきたため、一刻も早く国を脱出する必要があり、友人などの助けを借りて日本に入国することができた。」

 

このような状況下で、さまざまな理由を背景に、家族を母国に残さざるを得なかった人たちがいます。彼らは、タリバンによる迫害の恐れから、一刻も早く家族を日本へ呼び寄せたいと希望しております。彼らの経済的な困窮に、アフガニスタンにいる家族への心配も加わり、退避者の心理面でのさらなる不安が懸念されます。

「私の排風社はアフガニスタンの病院で研修中ですが、赤ちゃん2人の世話、家事等で大変な苦労をしています。彼女はタリバンから、男性の付き添いなしに外出しないよう何度も止められ、迫害され、拷問を受けています。ましてや、私が他の国にいることが分かれば、彼女は相当な危険にさらされるでしょう。」

 

実際、調査の7割に当たる人が「心理的ストレス・うつ症状」の自覚があると回答しております。

「私たちは精神的に疲弊しきっています。私たちは銃口を向けられた状態から逃れ、生活基盤をすべて国においてきました。2カ月間、日本のビザを取得するのに苦労し、全財産を使い果たしました。私たちには希望がなく、よい未来を見ることができません。」

 

また、本調査で、家族と共に退避した人の65%は学齢期の子どもが就学できていないという現状がありました。その理由として多かったのは「手続きができない」「学費が払えない」で、子どもの教育にも、経済面からの影響がでております。

「私の子どもは外国人であるためにまだ小学校に入学できておりません。学校側では私の子どものために通訳アシスタントを探す必要があるとのことです。」

 

異国で生活基盤を築くのはとても大変なことです。特に言語的、文化的背景が全く異なる日本では、たくさんの退避者が苦労しています。本調査の回答者の14.5%は日本語学習について全く経験がなく、40%が3カ月以下の日本語学習に取り組んでいると答えています。1年以上取り組んでいるという回答者も16%いました。現在日本語学習を行っている人が直面する課題として「プログラムの不足」「仕事等で時間の確保が困難」「費用負担」等が挙げられております。

 

<調査結果を受けての提言>
上で紹介されたように、調査に回答してくれたアフガニスタンからの退避者がさまざまな課題を抱えて日本で生活をしています。折居さんが最後に紹介した、回答者の声からは、退避者の未来に対する不安と日本での生活に対する悲痛の訴えが感じられました。

「4人のアフガニスタン人留学生のうち、2人が深い悲しみと不満を抱きながら日本を去りました。またもう一人、もうすぐほかの国に出発します。私がアフガニスタンを去る前、日本は世界第5位の経済大国だと聞いていました。日本なら成功できると。しかし、日に日に自信を無くしています。環境さえ整えば、私はここで生き残ることができるのです。」

こういった人を1人でも減らすべく、折居さんに日本全国、そして日本政府へ向けて提言をまとめていただきました。

<日本語教育>

日本語は日本で生活を送るための最も重要な基盤の一つとなります。アフガニスタン退避者が日本語をある程度習得できると、現在彼らが直面しているさまざまな問題の解決に繋がります。そのためには、大学や学校、支援団体の協力を得て、短期集中的な日本語学習機会を提供する必要があります。

<就労支援>

日本に退避してきているアフガニスタン人の多くは高学歴の持ち主で、9割が英語を話すことができます。適切な就職支援と日本語学習が進めば就労の可能性は高まります。その期間、保証人による引継ぎの支援や、本人がエントリーレベルのアルバイトから仕事を始める意識を持つことが必要になります。

<家族統合>

家族統合は、心理的・精神的な安定、そして人権の尊重という面からも重要な課題です。現在、厳しい難民申請の制限の中で家族を日本へ呼び寄せることが非常に困難な状況にあります。しかし、民間セクター(企業、大学、教育機関、日本語学校等)がアフガニスタン人の雇用や奨学金提供等していただくことにより、切り開ける道は存在します。

また、アフガニスタン退避者受け入れコンソーシアム、(特活)なんみんフォーラム、(公社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンによる、政府への要請(要旨)を紹介していただきました。

上のまとめの内容は、実はほとんどが、今回のウクライナ避難民への支援で実現していることです。日本政府は、これまで、事象的・個別的に難民、避難民の対応を行ってきました。その意味で、ウクライナ避難民への対応とアフガニスタン(その他これまでの難民)の対応とでは差がついております。政治的な背景が影響してしまうところが、難民支援の難しいところですが、今回のウクライナ避難民への支援対応が標準となり、統一した難民受け入れ、支援が行われてほしいです。

 

以上、3人の登壇者の報告になります。その後、3人の登壇者にシャンティの山本事務局長を進行役に迎え、パネルディスカッションが行われました。

 

パネルディスカッションは、前もって参加者から寄せていただいたご質問、登壇者の発表中に頂いたご質問に答える形で行われました。以下、抜粋して、ご質問とそれに対する回答をまとめさせていただきます。

 

質問:政変後の中等教育の状況や学習達成率、Learning Povertyについて教えてください。

回答(小荒井さん):中等教育の学習達成率のデータは入手できていません。しかし、初等教育レベルにおいて、世界銀行の報告(2019年)によると、93%の子どもがその歳で求められる読解力に達していないというデータがあります。これには、2018年時点で既に370万人の子どもが学校に通えていなかったという背景があります。また、学校に通えたとしても、教育の質の確保ができていないという現状もあります。現在初等教育は開かれているものの、中等教育が再開されていないので、基礎学力のレベルがより低くなることが懸念されています。

 

質問:今も退避をしている人がいて、退避者の支援が必要ということですが、現在の支援の状況を教えてください。

回答(折居さん):直接支援を求める人と、そうでない人への支援のアプローチは異なります。支援を求める連絡が直接ある方には、そのニーズに合った支援を行っております。例えば、家族を呼び寄せたいという方には、ファンドレイズ活動を通して、ビザの取得や渡航費、当面の生活費のサポートを行います。その他にも、日本語学習の支援や子どもの支援を行います。

 

質問:暫定政権下で教育支援にあたる際の課題は何ですか。

回答(杉本さん):教育支援にあたるなかで、様々な制限があり、なかなかやりたいことができない現状があります。しかし、私たちの現地のスタッフは継続的な支援を行うために、状況に逆らわずという姿勢を維持し、できる支援を行っております。

 

最後に、それぞれの登壇者からのメッセージを紹介させていただきます。

<杉本さん>

政変以降、生活がどんどん厳しくなっており、食料や物資のニーズが重要視されているため、教育まで手が届かなくなってきています。そんな中でも、教育への支援を継続していきたいと思います。

 

<小荒井さん>

子どもの教育の質の確保や女子の中等教育の停止に世界中が注目しているなか、これからの課題は重要であり支援が必要ではありますが、そもそも学校に行けていなかった若者・大人への基礎教育支援や成人女性の識字率が未だ30%以下に留まるという問題が後回しになってきています。日本として、その課題への支援についても関心を持っていただきたいと思います。

 

<折居さん>

2001年以降、私たちがアフガニスタンで支援を行っていた間、アフガニスタン人は私たちと一緒に働いていた同僚であり仲間でした。そんな人たちが、今助けてほしいと言っています。日本が脆弱な人々を見捨てない国だと訴えるためにも、政府を含む様々なアクターがアフガニスタン人の支援に関心を持ち、できることをやっていければと思います。

 

以上、オンラインイベントの報告になります。

世界各地で、紛争や自然災害が続くなか、日本への支援を必要としている人びとが多数います。それぞれの事象に対して、支援の難しさや課題が存在するのも事実です。しかし、上で挙げられたアフガニスタン退避者の声にもあるように、今こそ、日本が必要な支援の在り方を模索し、そのニーズに積極的に手を伸ばしていくことが必要だと思います。何か遠くで起こっているように感じても、実際、困っている人たちは私たちのすぐそばで生活していたり、日本とつながりを持った人で、現在アフガニスタンのような国で苦しい生活を強いられたりしているなど、実はそんなに遠い世界のことではないのかもしれません。

 

シャンティはこれからも、そういった人たちに寄り添った支援を継続していきます。

地球市民事業課 喜納 昌貴