【開催報告】「忘れないで、アフガニスタン。~人々の暮らしは今?ジャーナリストとNGOからの報告~」
10月3日に、国際協力NGOセンター(JANIC)のアフガニスタンワーキング・グループ主催でオンラインイベント「忘れないで、アフガニスタン。~人々の暮らしは今?ジャーナリストとNGOからの報告」(ジャパン・プラットフォーム(JPF)アフガニスタンワーキング・グループ共催)を開催いたしました。
当日は80名ほどの方に参加をいただくことができました。
報告会では本年アフガニスタンで現地取材されたフォトジャーナリストの川畑嘉文氏の基調講演のほか、女性の生計向上や地雷回避教育、国外への退避支援等の活動を続ける3つのNGOによる事業の紹介がありました。
最初の川畑氏の基調講演では、ご自身がフォトジャーナリストになる契機となる9/11テロを目撃したこと、その後、アフガニスタンに渡航した時の話、そして、今年のアフガニスタンでの取材を通して見えてきたことを、講演をして下さりました。本年の取材で訪れたカブールやジェララバードの町の様子、学校や図書館、そしてそこで学ぶ子どもたちの様子を多くの写真を交えてお話しいただき、現在のアフガニスタンのリアルを伝えていただきました。
🄫川畑嘉文
続いて、現地で活動を続けるNGOが、取り組んでいる事業紹介を行いました。
アフガニスタンでは、現在、女子の中等教育以上の禁止、女性の就労の禁止が続いています。加えて、NGOに対する締め付けも強まってきおり、厳しい環境の中での活動が強いられています。こうした環境にも負けることなく現地で活動を続ける職員の力強い声、事業を通して生活を再建しつつある裨益者の声なども紹介をいただきした。
まず、初めに、難民を助ける会(AAR)より、事業の紹介をいただきました。
AARは、現在、食糧支援、帰還民への支援、爆発物リスク回避教育の事業をアフガニスタンで実施しています。事業紹介の後に、現地で活動に取り組むスタッフの声を紹介いただきました。タリバン暫定政権により様々な規制が課され、思うように活動に取り組むことができない中でも、できる事を見つけて事業に取り組んでいます。
続いて、JENによる事業紹介をいただきました。アフガニスタンでは、生計向上支援に加えて、女子教育、水衛生、食糧安全保障に関わる事業を展開しています。
帰還民を対象とした自立を支える事業では、何を必要としているかを団体が決めるのではなく、裨益者に確認をしています。縫製の技術を持っている人が多いことから、自立を支援する上で、ミシンといった裁縫道具を提供するとともに、ビジネスやマーケティング講座を実施し、オーナーシップ意識が高まるように取り組んでいます。
事業紹介の最後には、支援を受けた女性の声が紹介されました。度重なる困難の中でも、支援を通して、生活再建に取り組んでいること、そしてそうした支援に対する感謝の言葉を伝えていただきました。
最後にREALsの事業紹介をいただきました。REALsは、食糧支援事業と退避・保護支援を実施しています。アフガニスタンでは、夫を亡くし、女性が世帯主となった場合であったとしても、女性の就労は認められないため、経済的に生活が困難状況に置かれ、食糧支援を必要としています。支援を受けた方の声も紹介され、生活に余裕が生まれるとともに、安心感にもつながっていることを紹介いただきました。
2021年8月のカブール陥落以降、女性活動家や前政権の関係者は、脅迫等の迫害を受けるようになりました。そうした人を対象に退避・保護支援を実施しております。退避後も声を上げ続ける人は多く、そうした人の声を紹介いただきました。
最後に質疑応答を行いました。
Q1 日本人職員はアフガニスタンに行くことはできるか。アフガニスタン社会は安心安全な社会に近づいているのか。タリバン暫定政権の前と後で違いはあるか
A1 外務省から退避勧告が出ているため、日本人職員はアフガニスタンには行っていない。治安に関しては、大きなテロなどは減っており改善されているように感じるものの、そうした報道がされなくなっているだけの可能性もある。
タリバン暫定政権前後での、変化に関して、雇用率の低さが最も大きな変化ではないか。失業率は非常に高く、それに加えて、女性は様々な制約があるため能力を十分に発揮できない状況に置かれている。
Q2 女子の中学校以上の教育が禁止されている中で、教育の機会としてどのような選択肢があるのか。オンライン教育などもあるのか。
A2 地域によって、非公式で教育を提供している場所もあるが、タリバン暫定政権の方針に反するため、いつ中止になるかわからない不安定な状況にある。オンライン教育という選択肢もあるが、教育に必要な機器を持っているか、ネット環境が整備されている都市部に限られる。教育のために国外への退避を考える人もいるが、それを実際に行うことができる人は限られている。
Q3 現地と活動する中で、国際社会の中で日本に期待していることはありますか。また、一般の人や学生で、アフガニスタンのためにできることはありますか。
A3 日本はタリバン暫定政権前から多くの支援を実施してきた。こうした支援によって信頼関係を構築しており、それに基づいて人道支援など、現地に寄り添った支援を行うことが期待されている。
一般市民としてできる支援として、様々な団体がアフガニスタンで支援をしている。そうした団体に寄付をすることができる事だと思われる。また、今日のイベントを通して知ったことを周りにいる人に話をすることで支援の輪を広げていくことも可能である。
また、自治体にもよるが、様々な地域に日本語教室があるので、そこでボランティアをすることはできる。また、学生であれば、例えば、大学の留学生支援室を通した外国人の支援をすることも可能である。
最後に川畑氏より「人間にとって最も罪だと思うことは、無関心であることだと、講演会では伝えるようにしている。そうしたことから、今日のようなイベントで知ろうとすること、そしてそれを広めていくことは重要ではないか思う。」とのコメントがあり、締めくくられました。
イベント後の様子(写真2列目右端が川畑氏)
海外緊急人道支援課
瀧孝輔