【開催報告】能登半島地震 緊急活動報告会~発災から今日まで、輪島市被災地域の今~
3月27日、シャンティが現在実施している、能登半島地震における支援活動についての報告会が開催されました。会場とオンラインから、多くの方にご参加いただきました。
現地で支援活動を行ってきたシャンティ副会長の茅野と、国内事業課シニアスタッフの市川職員が報告を行いました。
●登壇者
茅野 俊幸
シャンティ国際ボランティア会 副会長
公益財団法⼈庭野平和財団 理事
⻑野県 松本市 瑞松寺 住職
能登半島地震発⽣直後から被災地域で松本の地域団体と炊き出しを開始。
現在に⾄るまで関係団体と連携しながら避難所の運営⽀援、炊き出しや⾜湯活動を実施。
市川 斉
シャンティ国際ボランティア会 国内事業課 シニアスタッフ
拓殖大学非常勤講師
1990年から、シャンティにて活動開始。阪神淡路大震災の支援活動で神戸事務所長、アフガニスタン事務所長、事務局次長、常務理事、ミャンマー事務所長を歴任後、現職。
能登半島地震発⽣後、門前事務所の事業統括として事業を牽引する。
●能登半島地震被災地域の状況
輪島市では、一時期は市全体の人口の約60%である12,834名の方が避難をしていました。3月5日現在の避難者数は、市全体の人口の約15%である1,906人となっています。また輪島市の世帯数11,000のうち、14,000棟の家屋が被害を受けています。
シャンティが活動を行っている門前町に限ると、人口4,356人(2024年3月1日現在)のうち、避難所の人数・二次避難者・在宅避難者を合わせた人数は、人口の約3割に上ります。その中には親せき宅への避難者や県外避難者は含まれておらず、実際には人口全体の4~5割もの方が被災をしている状況です。
門前町では、2月20日に数多くあった避難所が11か所の指定避難所に集約されました。その中で、自宅避難者・車中泊の避難者は在宅避難者扱いになり被災者数としてカウントされず、行政からの物資配布の対象から外されました。仮設住宅も不足しています。ボランティアも不足しており、震災から約50日が経った2月23日にようやくボランティアセンターができましたが、受け入れは週30名に留まっています。またボランティア参加のために10日前までに登録が必要ということもあり参加への敷居が高くなっています。
●シャンティの支援活動報告
シャンティは、門前町を中心に様々な支援活動を行っています。まずは様々な自治体の支援が入る中で、調整役として避難所である門前公民館の運営サポートを行いました。また、ダンボールベッドをグループホームに配布しました。当時グループホームの建物の1部が福祉避難所になったことにより、定員を超える避難者が床で寝ている状況があったため、環境の改善に努めました。さらに、寝具が揃っていない避難所において、敷・掛け布団135セットを配布しました。
また門前町の炊き出しの関係団体受け入れ調整を担いました。被災した農家民宿のオーナーや飲食業のシェフの有志グループと協働で、2月末まで炊き出しを実施しました。驚くべきことに、行政の資金繰りの関係で弁当が配布されていない自治体も3月17日時点でありました。輪島市で初めて弁当が行政から配布されたのは2月15日でしたが、それまではレトルト食品が中心となっておりました。これまでの国内災害においても、これほど食における課題が顕著であったことはありません。
また避難所でお茶会や足湯などのサロン活動を実施したほか、アクセスが難しい地域の方々を対象に、自衛隊が設営した入浴施設や門前町中心部の買い物への支援車を運行しました。加えて、行政からの避難者支援の対象外となった自主避難者・車中泊者に、お弁当を配布しています。
各大学やボランティアセンターと提携して、学生及び関係者の派遣を行い、被害に遭った家の片付けに取り組むなど、被災者のニーズ収集やニーズ対応に努めています。
3月24日には、地元の祭りである雪割草祭りのサポートを行いました。二次避難所へのバス運行や寄席の開催サポートをし、当日は500人以上が参加しました。加えて他機関との連携も積極的に行っており、自治体や他NPOとの県域全体での会議、輪島市内で活動する他団体との情報交換などを行っています。
以上のようにシャンティは様々な形で支援活動を行っていますが、今後もまだ多くの課題が見込まれます。通水が再開している一方で、水道管の破損による漏水や排水の問題により、家屋で実際には水を使用できていないという課題があります。また高齢者の福祉サービスやデイケアサービスが現在も停止しており、家族の負担が増えています。さらには今回の地震をきっかけに街を出る人もおり、街の高齢化が加速しています。
仮設住宅の建設など、復興に向けて進んでいる面もあるものの、まだ止まっている部分も多いという印象です。シャンティとしてはこれまでになく地元と密着して活動を実施しており、今回は地元の方にスタッフとして活動に参加いただいています。
●現地の声:ビデオメッセージ
被災をして学校の体育館で避難生活を送りながらも支援活動をされている、地元住民でありシャンティの外部スタッフでもいらっしゃる方からのビデオメッセージも紹介されました。
元旦に自宅で被災し、その夜は車中泊をし、2日から避難生活をしています。家は全壊で、仮設住宅待ちです。今にも倒れそうな家屋さえ、解体ができていません。水道は通っていますが漏水があり、漏れがある箇所を探して建物まで繋げないと通水ができないという状況です。下水道が破裂したり溢れたりしていて、水を流せない家庭もあります。
地震発生から3か月も経ちますが、発災から状況はあまり変わっていません。テレビの取材では「前向きですね」と言われることもありますが、この街は2007年の震災とその後の復興も経験しています。もう一度復興かと考えると、踏ん張れるかどうか分からないというのが現状です。震災に関しての報道が減っていく中で、今の被災地の状況を多くの人に分かってもらいたいです。周りは高齢の方が多く、自分たちが地域を引っ張っていければ、と感じています。頑張ります。
●茅野副会長による、発災から今日までの様子
発災直後は主要道路も寸断し、迂回しても通行止めといった悪路をなんとか進み、極寒の中物資や食料の配布を行いました。
門前に拠点を置き、各関係機関との連携の上で、門前町公民館避難所の運営や、炊き出しを行いました。感染症の拡大もあり、避難所運営に当たる人材の確保も困難も極めました。それでも、避難所人数の点呼、仮設トイレの掃除、避難所内のトイレの水くみ、感染症対策のための感染者の区分け、隔離部屋の設置などを行いました。
断水が続き、食用の水も洗うための水も限られる中、炊き出しを行いました。手に入る食材で精進料理を作ったのですが、久しぶりの炊き立てのご飯と味噌汁に、避難所に笑顔が戻りました。炊き出しを続けていると、「いつもおいしい炊き出しをありがとう」という言葉とともに、被災された農家の方から食材を提供してもらったこともありました。いただいた野菜で、ポトフやスープを作ることができました。被災されながらも、多くの地元の方が避難所の運営を支えてくださっており、その存在を心強く感じています。
七浦避難所では、泊まり込みで150食のお弁当を作り、配布しました。入浴や買い物の支援車運行では、38日ぶりにお風呂に入ったという方もいらっしゃいました。また、地元の若者との出会いもあり、彼らの協力のお陰で活動を続けられています。
現地の方々は、過去の震災から復興の歩みを進めていました。その最中で、今回前回より更に大きな地震に見舞われ、外部の人間には分からない悲しみや苦しみを抱えていらっしゃいます。そのような状況においても、外部の団体である私たちシャンティを受け入れていただいています。こちら側の想いだけでは、支援は成り立たない。現地の方々の惜しみない協力があるからこそ、活動が成り立っていると改めて実感しました。
●質疑応答
Q. ボランティアの不足など様々な課題が挙げられましたが、改善の見込みはあるのでしょうか?また活動を通じて感じたことは何でしょうか?
A. 市川職員
行政もこのような状況を経験するのは初めてという状況ですが、ボランティアの受け入れへの理解は進んでいます。外部のボランティアが今後撤退することが見込まれる中で、地元の方をどのように巻き込んでいくかが課題だと感じています。震災からある程度時間が経つと、物事がうまく運ばず、外部の人からは見えない形で、地元の人が苦しさをより感じる時期が来ると思います。報道が減っていくからこそ、現地の方々に思いを寄せ続けることが重要です。
Q. シャンティの活動を見て、現地の方との連携が重要と感じています。実際に連携を進める中で、どのような想いを持ってこれまで活動をしてきましたか?
A.茅野副会長
現地での活動を通じて、様々な方との出会いのありがたさを感じています。地元の方々は、總持寺総院を通じた曹洞宗への想いがあるからこそ、シャンティをここまで受け入れくれました。今後も引き続き、曹洞宗・シャンティ・現地の方々が三位一体となって協力していくことが重要だと感じています。現地の方々の協力があるからこそ、今の活動ができていると思っています。
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