2010.06.17
読み物

難民キャンプの子どもたちの歯の状態は~阿部先生レポートより

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

こんにちは。
ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の小野です。

今回は、去る5月7日にウンピアムキャンプを訪問下さった歯科医の阿部貴之先生の報告を紹介します。
(詳しくは5月11日のブログをご参照下さい)

さて、対象は、3~15歳のウンピアムキャンプの子どもたち50人(男の子30人、女の子20人)。

6~11歳というのは乳歯と永久歯が混在する時期で、分析にも配慮が必要だったようです。

果たして彼らの歯の状態はどうなのか。日本の子どもたち(厚生労働省データ)と比較して見えた結果とは・・・。

 

阿部先生

「難民キャンプの子どもたちって虫歯が多いのかなあ」という素朴な疑問に答えるデータがこれ。質素な物を食べているからかなりいいはず?でもタイのお菓子は結構甘いし、歯磨きの習慣とかはどうなの?
ふだん接している子どもたちのこと。いろいろと知っておきたいことのひとつです。

以下、阿部先生がまとめてくれたデータのうち、以下の2つのデータを抜粋させて頂きます。

①1歳~15歳未満における乳歯について、虫歯(未処置歯)があるものとないもの
平成17年度 日本 虫歯のない子76.0%
虫歯のある子24.0%
ウンピアム・マイ 虫歯のない子40.0%
虫歯のある子60.0%

②5歳~15歳未満の乳歯+永久歯について虫歯(既に処置した歯を含む)があるものとないものと処置状況
平成17年度 日本 虫歯のない子31.9%
虫歯のある子68.1%(処置完了者は31.2%)
ウンピアム・マイ 虫歯のない子14.0%
虫歯のある子86.0%(処置完了者は0)

まとめとしては、阿部先生はこう記しています。

「・・・虫歯が処置されてあったのは12歳の女の子の永久歯1本だけでした。・・・2年前にタムヒン難民キャンプにおいても子供たちの口の中を拝見させていただきましたが、前回同様、虫歯の発生率が高いという印象です」。

どうやら、虫歯を適切に処置できる歯医者さんの存在やふだんの歯磨きの大切さもあるようですね。

更に「・・・(虫歯が)進行した場合、キャンプ内では抜歯しか行っていないため、イコール歯の喪失につながります。キャンプ内の生活では加齢とともに失っていく歯の本数がかなり増えていくであろうと予測されます。」

歯は、人間の一生に深く関わっています。一時的な難民キャンプ滞在なんていって日常的に歯の健康を保つことを怠っているとたいへんなことになって行くわけですね。

救いとしては「ブラッシング指導の最中、子供たちの中には大きくうなずくしぐさや、リアクションする子もみられ、
ブラッシングの必要性を多少は知っていると受け取れました」
とのコメント。

予防が重要!図書館にも歯のはなしをテーマにした絵本やパネルシアターなどもありますので、学校や家庭での教育と合わせて、図書館の活動からも、子どもたちの歯を守るための配慮をしていく必要はある、と思いました。


図書館員による「歯磨きくん」の話も、じわりと予防につながります。

末筆ながら、貴重なデータとご指摘を下さった阿部先生に感謝致します。

以上