2017.07.22
読み物

第一回「図書館にいる人びと」

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
人びとの声
図書館

シャンティのミャンマー(ビルマ)難民事業事務所では、今月から“People At Library(=「図書館にいる人びと」)と題し、難民キャンプ内のコミュニティ図書館を利用する人びとのストーリーを紹介・共有するシリーズを始めました。今回は、3人のストーリーを紹介させていただきます。

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「図書館にいる人びと」シリーズで目指していること

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所が支援する21の図書館は、難民キャンプという出入りの管理された空間にあるため、一般的なアクセスは非常に限られています。一方、図書館は多方面から支えられ、世界各地から関心を持っていただいています。キャンプ内の図書事業に興味を持っていただいている人びとや図書館を支えていただいている方々と、図書館を実際に利用している人びとを、難民キャンプという囲いや国境、そして言語の違いを超えてつなぎたいと考え、このシリーズをはじめました。

図書館の利用者は、タイに逃れたミャンマー(ビルマ)難民です。コミュニティ図書館のある7カ所のキャンプと図書の支援が行われている2カ所のキャンプを合わせて、難民の人口は約10万人とされています。このような難民というカテゴリーや統計的なデータは、私たちの直面する課題を解決していくために重要な役割を果たしている一方で、“心の距離感”を生んでしまいがちであるようにも思います。そこで「図書館にいる人びと」シリーズを通して、難民という立場や数字を通した認識に加えて、図書館に居合わせた人びとを学生や母親、ボランティアの一員といった様々なアイデンティティを持った一人の人間として、皆さんに紹介できたらと思っています。

「図書館にいる人びと」#1

私は23歳でカレン族です。私は、以前難民キャンプがあったショー・クローというところに生まれ、後にメラ難民キャンプに移り住みました。

5年生の時に図書館青年ボランティアとして働き始めました。図書館員のお手伝いを通して、子どもたちへ歌を歌うことや読み聞かせなどのスキルを身に付けることができました。これらのスキルと勇気を得て、自分の中から恐れが消え去りました。恥ずかしさが過去のものとなり、本当の自信をもった人間になったように思います。

学校を卒業した後、図書館担当者の欠員募集があることを聞き、応募したところ、採用されました。この仕事に就くことができ、とても幸せでした。図書館のために働きたいと強く望んでいたからです。私は次の世代の図書館青年ボランティアの見本になることができます。とてもうれしいです。

―2017年6月、メラ難民キャンプのコミュニティ図書館にて

「図書館にいる人びと」#2

僕は16歳です。ミャンマー出身です。僕は7歳の時に難民キャンプにたどり着きました。

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難民キャンプに着いた時から、図書館に来ています。図書館に来て、読み聞かせをしたり、絵を描いたり、踊っている人びとを見たり、ゲームをします。とても楽しんでいます。僕の叔母が図書館で働いていて、ボランティアが必要だと教えられたので、僕は図書館青年ボランティアに参加しました。活動に参加できてうれしいです。僕は子どもたちが歌ったりゲームをすることを助けたり、読み聞かせをしたりします。

子どもたちが楽しむ姿や笑顔を見るとうれしくなります。子どもたちが本を読んで、幸せなことが僕にとっての幸福です。

―2017年6月、メラ難民キャンプのコミュニティ図書館にて

「図書館にいる人びと」#3

私はカレン州のパーヘイという小さな村の出身です。難民キャンプに来たのは1995年で、当時はDKBA(民主カレン慈善軍)とミャンマー国軍とカレン民族の紛争中でした。

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キャンプに着いた当時、6人の子どもがいましたが、さらにキャンプで2人の子どもを持ち、今は8人の子どもがいます。実は、ジャングルの中を村から村へと避難し、難民キャンプにたどり着く前に、私は子どもを一人亡くしました。病気になった子どもを病院へ連れて行くこともできず、ただただ逃げなければならなかったからです。

いま、一番上の娘は第三国定住でカナダに移り住み、3人の子どもが産まれて家族で暮らしています。ほかの7人の子どもたちもアメリカに第三国定住し、それぞれ一人で暮らしています。

私は本当に図書館が好きで、本当に本が好きです。悲しいときや家族や将来について心配なときに支えてくれる本がたくさんあるからです。本は私を癒やし、本を読んでいると、本当の平和と楽しみを与えてくれます。

私はニュースに関連する図書や雑誌が好きです。カレン州や政治問題について、例えばUNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)からのニュースは、私の将来のために重要な情報です。道徳的な本や宗教的な本も私を励ましてくれます。私は本を通じて得た良い経験や知識を子どもに教えることができます。私だけではなく、私の子どもも図書館が大好きです。中には、ニュースや他の情報に図書館のパソコンを通してアクセスできる子もいます。彼らは図書館でパソコンのスキルをさらに磨くこともできます。

図書館は、楽しんだり、新しい経験を得たり、スキルを培うみんなの場所であると感じています。私の子どもだけではなく、近所の人や外で遊びまわっている子どもたちにも図書館に来て本を好きになることをぜひ勧めているんですよ。

―2017年6月、メラウ難民キャンプにて


最後まで読んでいただきありがとうございます。今後もブログやソーシャルメディアを通して、より多くの方々に図書館を利用する人びとのストーリーを紹介できるとうれしいです。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所 田村