2018.01.29
読み物

第七回「図書館にいる人びと」

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
人びとの声
図書館

冬のないメーソット事務所から、こんにちは。
日中は毎日30度を超えています。

さて、第七回目は、キャンプ内の学校図書館にいる人びとについて紹介したいと思います。私たちの事業では、キャンプ内のコミュニティ図書館を主な支援拠点としていますが、活動は各館内だけでなく、キャンプ内の学校や保育園、そして地区コミュニティにまで広がっています。ではさっそく、今回のストーリーをご紹介します。

●「図書館にいる人びと」のストーリー
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「私の名前はソー・オーガストです。私は30歳です。メラマルアン難民キャンプの第一高等学校の校長をしています。ここでは6年間働いています。昨年、近くの小学校がこの高校に統合されたため、今はこの学校には図書室が2つあります。ここは高等学校の校舎で、この図書室も高学年用のものです。2人の職員が学校図書室の管理を担当しています。図書室は学生に読書してもらうために本を提供しています。そして私たちはシャンティに支援いただいているキャンプ内コミュニティ図書館と協力しています。私たちは、若い世代の発達のための取り組みを行っているシャンティに感謝しています。」

―2017年10月、メラマルアン難民キャンプにて


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「私はエ・サ・ムーです。学校教員です。私はこのPDC学校(ポスト高等教育機関)で2つの教科を教えています。マネジメントのクラスと、人権と民主主義のクラスです。教室の横にあるこの学校図書室は、学生にいろいろなことを教えるために利用しています。ここにある図書を授業に持ち込み、説明したりもします。

シャンティの支援するコミュニティ図書館によって提供されている移動図書箱サービスは、学生と教師の双方にとって非常に便利です。様々な状況について学び、知識を得ることは大事だからです。」

―2017年10月、メラマルアン難民キャンプにて


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「私の名前はトゥン・ルインです。バンドンヤン難民キャンプにあるPAB-OPC校の校長です。私たちは、この学校の学校図書室を支えてくれているシャンティにとても感謝しています。以前は私たちの学校には図書室がありませんでした。しかし、シャンティの支援を受けて、今は多くの子どもたちが本を読むことができる環境があります。生徒たちが読みたいと思った分野の本を見つけて、この学校図書室で読むことができます。

今、子どもたちは暇な時間に外に出ていく必要がなく、この学校図書室で遊んだり読書をしたりすることができます。彼らはゲームや他の活動を通して友情を培っています。学校図書室は私たちの学校において非常に価値があります。もし他にもさらに良い図書活動が何かありましたら、ぜひ教えていただきたいです。よろしくお願いします。」

―2017年11月、バンドンヤン難民キャンプにて


キャンプ内の学校と学校図書の様子

今回は学校図書室に関わっている3人を紹介しました。第三回「図書館にいる人びと」でも学校の先生の声と、教員を対象とした図書館研修についてご紹介しました。今回は、学校運営や学校図書室の状況について共有させていただきます。

難民キャンプ内の学校教育機関は、保育園からポスト高等教育機関まであり、さまざまな年齢の子どもたち、若者たちが学びの機会を得る場となっています。

難民キャンプ内でも基本的には小学校は6年間、中学校3年間、高等学校3年間、そしてポスト高等教育機関では2年または4年といったように、日本と同じような学校制度で機関が設定されています。年齢もだいたい日本と同じような年の子が就学していますが、たとえ同じ学年の生徒でも年齢が同じとは限らず、入学する年齢や進学状況に少しばらつきがあるようです。

学校名には少し注意が必要です。高等学校と名前がついていたとしても、小学校レベルからの学年を統合して1年生から12年生までのクラスを運営している学校も少なくはありません。これは、キャンプの規模や運営効率の点などからこのような制度になっているようです。今回紹介したメラマルアン難民キャンプの第一高等学校も、一昨年までは7年生から12年生レベルのみを受け持っていました。しかし、生徒や先生が減少し、教育支援のプロジェクトも縮小している中での一昨年の小学校の統合を経て、現在は1年生から12年生の授業を一つの学校機関として行っています。

ポスト高等教育機関については、以前のブログ、第二回「図書館にいる人びと」 でも少し触れました。今回紹介した先生の所属するPDC校の校長先生にお話を聞いたところ、PDC校は2年制であり、毎年25名の学生を受け入れているとのことでした。個人の支援者と団体の支援から成り立っている学校の運営は、資金的な厳しさに直面しているといっていました。近年難民の帰還の話がじわじわと迫る中で、キャンプ内での教育への関心がミャンマー(ビルマ)国内に移行しているとのことでした。

カレン族が大多数を占めるキャンプにおいての指導言語は、ほとんどがカレン語、そして高等レベルとなると英語も取り入れているようです。一方、ビルマ語を指導言語としているビルマ族系の学校もいくつか存在します。ビルマ族やムスリムが多く居住する地区において運営されています。そしてその一つが、今回紹介した中の3人目の先生の所属しているOPC-PAB校です。就学するのは1年生から7年生のビルマ族の子どもたちで、ビルマ語のみで授業がなされます。規模は他の学校に比べとても小さく、全学年を合わせても70人に満たない人数でした。

学校図書館は、各学校によって管理の度合いや仕方が様々です。しかし、全体としていえることは、図書を管理する人材やスキルが不足しているということです。学校によっては図書館担当の先生を設けているところもありまずが、図書館管理に関する知識や経験が足りないため、研修会などがさらに必要だという話を聞いたりします。移動図書箱サービスを利用するものの、なかなか有効に活用できていない現状もあるようで、これは私たちのプロジェクトの課題ともなっています。

そんな中、いくつかの学校では、先生と生徒・学生の協力のもとで、学校図書館が積極的に管理・運営され、移動図書箱サービスも有効に活用されているというとても良い事例があります。図書館青年ボランティアの学生を中心に、毎日学校図書館で低学年の子どもたちにお話し会を開き、活発に図書活動を行っている学校があります。学生で図書館委員会を作り、図書館のルールを作ったり、貸出手続きの番を順に回したりするなど、学生主体で運営をしている学校もあります。そのような経験や積極性をぜひ、他の学校コミュニティにも共有し、ともに学び合うことで、学校でのよりよい図書環境を広げていくことができればいいなと思います。

いつもシャンティブログをお読みいただき、ありがとうございます。

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どうぞよろしくお願いいたします。

ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所
田村