2021.01.09
読み物

【寄稿】恐れるのは知らないから(三部義道)

アフガニスタン
ニュースレター
人びとの声
連載企画

年4回発行しているニュースレター「シャンティ」に寄稿いただいたシャンティと深く関わりのある方からの記事をご紹介します。

シャンティ国際ボランティア会 副会長
三部義道 山形県松林寺住職

アフガニスタン支援開始への賛否

21世紀を迎えたその年、アメリカで同時多発テロが起こり、その報復としてアフガニスタンへの空爆が実施されました。その時になって世界の耳目がアフガニスタンに注がれ、その厳しい現実が白日の下にさらされました。
シャンティでは緊急食糧支援が急務だとの判断から人員を派遣し、支援の届きにくい奥地までロバを使っての支援を実施しました。
緊急救援から復興支援へとつながっていくのはある意味、必然的な流れであり、アフガニスタンでの教育支援の必要性が高いという状況が見えてきました。しかし、これまで関わったことがないイスラム社会での活動にためらう声も多く、理事会では賛否両論が交わされました。

緊張の現地視察へ

結果として、理事会から視察団を出して判断することになり、視察団の一人として現地に行くこととなりました。
パキスタンのペシャワールで民族衣装サルワール・カミーズに着替え、帽子をかぶり、外国人であることを隠すようにカイバル峠を越えました。日本製の中古のバンには自動小銃を持ったボディガードが乗り込み、緊張感はいや応なく高まっていました。
そんな車中でアフガニスタンのスタッフが、遠くの岩山を指さして「あそこに見える洞窟は昔仏教の寺院があった跡だ。我々の祖先は仏教徒なので仏教に違和感はない」と話してくれました。ひげもじゃのムスリムの男たちに囲まれて頭を丸めている居心地の悪さを感じていましたが、一瞬にして力が抜けました。

筆者と子どもたち(2002年9月撮影)
筆者と子どもたち(2002年9月撮影)

友だちとは戦えない

その後も、男たちの親切と優しさとユーモアのある人間性に触れ「人間はどこの国でも同じ」と肌身で感じました。
宗教や民族が違うと、相手を怖いと思ったり、あるいは劣っていると勝手に思い込んだりしてしまいますが、実際に顔を合わせ、手を握り、抱き合ったりして、言葉を交わせば、人間として何の変わりもないと分かります。
戦おうとするのは相手を知らないからだと言えます。友だちを傷つけることはできないでしょう。“シャンティ(平和)”な社会の実現は相手を知るところから始めなければなりません。

本寄稿記事とニュースレターについて

本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.294 (2018年春号)」に掲載した巻末言「道」の内容を元に再編集したものです。※ニュースレター「シャンティ」は年4回発行し、会員、アジアの図書館サポーターに最新号を郵送でお届けしています。

シャンティは、子どもたちへ学びの場を届け、必要としている人たちへ教育文化支援を届けています。引き続き、必要な人へ必要な支援を届けられるよう、月々1,000円から継続的に寄付してくださる「アジアの図書館サポーター」を募集しています。