2024.08.28

世界の絵本を読んでみよう 「魚の群れ」ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ
世界の絵本を読んでみよう
絵本
連載企画

シャンティ国際ボランティア会は、良質な本が少ないアジア各国・各地域で独自に制作した絵本を出版しています。子どもたちに質の高い絵本を提供できるよう、現地の作家やイラストレーターを対象とした専門家による研修を実施したり、少数民族たちに口頭で伝承されてきた民話などを絵本にまとめる活動を行っています。

今回は2008年ミャンマー(ビルマ)難民キャンプで出版した絵本「魚の群れ」をご紹介します。

「魚の群れ」表紙

1.昔、ある川のよどんだところに、たくさんの魚たちがリーダーのもとで幸せに暮らしていました。

ある大雨の夕方、リーダーは魚の子どもたちに「食べ物を探しに行こう」と言いました。先頭を切って泳ぐリーダーの後を、子どもたちは列車のように続きました。元の場所に戻ると、リーダーは「私は少し休憩するから、お互いに愛し合い、平和に暮らすのだよ」と言いました。

 

2.そんなことは何も知らないソーウィーが、魚釣りにやって来ました。彼は、団結している魚の群れを見つけ、リーダーの声をしっかりと聞きました。釣竿をおろしても釣れないだろうと思ったソーウィーは、ほかの場所に移動しました。

 

3.ある日、喉が渇いたゾウがやって来て群れを見つけました。しかしゾウは「もう帰らなくちゃ。この魚の群れと同じようにしなければ」と言いながらそそくさと帰りました。

リーダーは子どもたちに「ゾウを見たか?ゾウはお前たちから学んだんだよ。団結していて、すばらしい信頼関係があったから」と言いました。

 

4.ある日カワウソがやってきて、注意深く魚を探し回りました。けれど、群れの団結ぶりに手出しができないと思い、自分も魚の群れのようになろうと決めました。

別の日には、雄牛が水を飲みにやって来ました。互いに尊敬しあう群れを見た雄牛は「一人でいては、ぼくにもいつか問題が起きる」と、急いで家へ帰りました。

 

5.ある夏、このよどんだ水はとても冷たくなりました。カエルがやって来て水の中をのぞき「とても団結しているな」と言って家に帰っていきました。

次の日、カワウソと雄牛とゾウとカエルは道で出会い、よどんだ水に向かいました。みんなは、強い信頼で結ばれた群れから学んだことを話し合い「自分の場所に戻っても魚の群れと同じように生きよう」と思いながらそれぞれの家へ帰りました。

 

6.魚の群れがいつものように食事から戻ると、リーダーは呼びかけました。「すばらしい信頼関係だ。だから、大勢の敵がみんなを探しに来たけれど、敵ではなくなったのだよ。これからもよどんだ水の中で、共に平和に暮らしていこう」。

 

 


「世界の絵本を読んでみよう」シリーズ

本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.319 (2024年6月号)」に掲載した内容を元に再編集したものです。

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