ラオス紙芝居出版:母親を忘れたトラ猫
むかし、あるところに、お母さん猫と息子のトラ猫が住んでいました。
その子はとても怠け者で、他の人に迷惑ばかりかけていました。毎日飲んで、食べて、遊んで、寝てばかりいました。
お母さんの仕事も手伝いませんでした。
ある日、トラ猫のお母さんは息子に、もっとしっかりするようにと言いました。
お母さん猫:あなたはもういい歳なのに、女の子と遊んだり、お酒を飲んだり、寝てばかりで、仕事を手伝おうともしない。将来について、一体どう考えているの?
息子(トラ猫):いやいや、仕事なら手伝っているじゃないか。ただ友達と遊んでいるだけで、女の子と遊んでもいないよ。
そして、トラ猫はお母さんのところから出ていきました。
お母さんは、息子が言うことを聞かないのを見て、とても悲しくなりました。
そして、どうすれば息子が立派な大人の猫になれるか、よく考えました。
さて、1年に1度のお祭りの日がやってきました。
村では朝から晩までパーティーが開かれました。トラ猫は、このパーティーにとても行きたいと思っていました。
お母さん猫は、自分は具合が悪いから、パーティーには行かずに自分の面倒を見るように、と息子に言いました。
しかし、息子は言うことを聞かずに、お母さんを置いてパーティーに行ってしまいました。
パーティー会場に着くと、太鼓のリズムに合わせて笑顔で踊る、美しい猫がいました。
会場にいた全員がそれを見て、あの猫はなんて美しいんだろう、どこから来たんだろう、このパーティーにいる猫の中で一番きれいだね、と言いました。
トラ猫はそれを見て思いました。
トラ猫:あの猫は一体どこから来たんだろう、何と美しい猫だろう。好きだ!
すぐに、トラ猫は踊っている猫のところに歩いて行って、挨拶しました。しかし、美しい猫は何も言わず、ただ微笑みました。
トラ猫:こんにちは、名前は?どこから来たの?一緒に踊らない?
美しい猫は何も言わず、ただ微笑んでいました。
美しい猫が何も言わないので、トラ猫はキャンディーや食べ物、飲み物を取り出して見せました。
トラ猫:全部あげるから、今夜一緒に踊ったり、話したりしようよ。
美しく化粧をした猫は、食べ物を全部受け取りましたが、やはり何も言わず黙っていました。
美しい猫が口をきいてくれないので、トラ猫は不機嫌になり、お酒をたくさん飲んで眠り込んでしまいました。
しばらくすると起き上がり、美しい猫がどこに行ったのか友達に尋ねました。
友達:知らないよ。どこに行ったんだろう?
パーティーが終わり、みんな家に帰りました。
トラ猫は次の日の朝にようやく目を覚まして、のろのろと家に歩いていきました。
家に帰ると、お母さん猫が尋ねました。
お母さん猫:お帰り、今帰ったの。昨日のパーティーはどうだった?
トラ猫:うん、昨日の夜はとても楽しかったよ。
お母さん猫:そう。でも私の具合が悪かったこと、忘れてたんでしょう?
それで、お母さんに何か買ってきてくれた?
トラ猫:ごめん、何も買わなかったよ。
お母さん猫:買わなかったの?それとも買ったものを全部、女の子にあげたんじゃないの?
トラ猫:いいや、そんなことないよ。
お母さん猫:本当にあげなかったの?
それじゃ、ここにある、これは何?
全部女の子にあげたんでしょう?
トラ猫:「えっ!?」
トラ猫はとても驚いて、「しまった」と思いました。
トラ猫は家を飛び出して、森に走って逃げて行きました。たくさんの動物たちが、彼を見て笑いました。
ニワトリ:ハハハ!トラ猫のやつ、母親を忘れてしまうなんて、どうかしてるよ。
豚:見てみろ。本当にバカな奴だ。恥を知れ。
アヒル:飲みすぎて自分の母親を忘れるなんて、聞いたことがないな、ハハハ!
それを聞いたトラ猫は、怒って言いました。
トラ猫:これからはおまえたちを見かけたら、いつでも食べてやるからな!
その日からというもの、息子のトラ猫は恐ろしいトラに変身し、他の動物を食べるようになってしまいました。
~おしまい
※この紙芝居出版は、公益財団法人 関西・大阪21世紀協会の日本万国博覧会記念基金事業および日本の皆様のご支援により実施されています。
公益財団法人 関西・大阪21世紀協会:https://www.osaka21.or.jp/jecfund/