ミャンマーの暗闇に差し込む「学校」という一筋の光
「私は子どもの頃から目が見えませんでした。そのため学校へ通うことができませんでした。」と語る38歳のチョーチョーウィンさん。
「生まれた娘のマーマーも、私が十分に働けないために、野菜を売る仕事を手伝わざるを得ず、今まで学校へ通ったことがありませんでした。ずっと、自分の目の病気のせいで娘を不幸にしていると罪悪感を背負ってきました。」
身体的なハンディキャップを持っている人は、教育や福祉が整っていない国では一層脆弱な立場に置かれてしまいます。そんな人たちに光を届けているのが、ミャンマーの夜間学校です。
夜間学校では、様々な理由で小学校に通うことができなかった子どもたちが再び学ぶ機会を得ています。通常5年間で学ぶ初等教育過程を2年で学ぶ短期学校で、小学校を修了できなかった10歳から14歳の子どもたちが対象です。修了試験に合格すれば、小学校と同様の卒業資格を得られ、中学校に進むこともできます。
小学校を卒業しないまま成長した若者は、読み書きや計算の能力が不足しており、保健や衛生、自分を守るための知識も得られません。また就職の機会も限られることから、社会的に不利な立場に置かれてしまいます。
「だから、娘が夜間小学校へ通えるようになって、本当に感謝しています。この機会を与えてくださって、心から感謝しています」
今、10歳になる娘のマーマーは、夜間学校へ毎日喜んで通っています。
「家に帰ると、必ず私に向かって教科書の中でその日に学んだ部分を読んでくれます。この時間が一日の中で一番幸せです。私は仕事がないときによく娘と一緒に学校へ行き、授業にお邪魔しています。娘やほかの子どもたちが大きな声で先生の言葉を繰り返すのを聞きながら、私も耳で一緒に勉強しています。夜間小学校が始まってから、暗闇の中にいた私たち家族に光が差し込んできたように、人生が変わりました。」
昔、自分が通うことができなかった小学校で、今、娘と一緒に学んでいます。夜間学校は、公教育から取りこぼされてしまった子どもの人生を変えるだけではありません。家族の人生も変えていく力があるのだと、強く確信しています。
ミャンマー事務所
中原亜紀