2022.02.24
シャンティな人たち

座談会「シャンティのこれから」

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座談会「シャンティのこれから」

2021年5月、東京事務所でシャンティの中核を担う職員6名による座談会を開催しました。それぞれシャンティの海外事務所や、一般企業での経験などを経て、社会と環境の変化に対応しながら活動する中で、どのようなことを感じてきたのでしょうか。日々の取り組みから感じるシャンティらしさや、40年目を迎えたシャンティの将来像について語りました。

人と人のつながりから見えてくるシャンティらしさ

聞き手:

本日は皆さんありがとうございます。40周年を迎えるにあたり、皆さんが考えるシャンティの良さ、シャンティらしさを教えてください。

菊池:

難民子ども文化祭を開催した時に、難民キャンプのリーダーから「シャンティの活動は私たちの文化や言葉、尊厳を大切にしてくれるところが良い」と教えてもらったことがありました。図書館活動や文化活動が、厳しい状況にある難民の人たちにとっていかに重要かを感じるとともに、これこそがシャンティらしさだと思いました。あと、図書館では子どもたちが思い思いに過ごしていて、閉鎖された難民キャンプの中でも図書館には自由があるんですよね。この自由な居場所として図書館の力を信じているところもシャンティらしさだと思います。


山室:

ラオスに駐在していた時、ほかのNGOや企業の方は、ラオス人と働く上で分かりあえない…といった話をよくしていたのですが、私は共感できませんでした。その理由を考えると、たとえばラオス人の新しい職員が入った時には、長年働いているベテランの現地職員や、日本から来た理事や東京事務所の職員と話すことで、シャンティマインドを知る機会が多かったからではないかと。こうし40年ずっとシャンティマインドが受け継がれて、共通した想いを持っている点はシャンティの良さだと思います。

ラオスで活動する山室

吉田:

タイのシーカー・アジア財団(現在はシャンティのパートナー団体)で働いていた頃、カンボジアのカオイダン難民キャンプで活動していた元職員ら、過去に「おはなしキャラバンセンター」の皆さんから読み聞かせの研修を受けた話や、「おはなしは教育の原点」という内容のタイ語で制作された冊子を見せてもらいました。私は恥ずかしながらそれまでその冊子の存在を知らなかったのですが、今も職員が入った時には必ず読み、読み聞かせをする時に大切にしていると教えてくれました。現地で活動の根幹が受け継がれていることを感じた瞬間でした。


谷島:

活動地での学校建設の贈呈式に日本のご支援者の方と参加した時に、長くご支援いただいている方が「シャンティの贈呈式には、いつも安心して参加できる」と言ってくださって。東京事務所と現地職員が、細かい部分まで完璧に調整しているからこそだと思いました。マニュアルがあるからやるのではなく、これをやった方がより良いと自発的に取り組む姿勢は、シャンティマインドからきているのではないかなと思います。

嘉味田:

クラフトエイド課で関わる生産者団体や作り手からよく言われるのが「長い間支援をしてくれてありがとう」という言葉です。難民キャンプ時代から30年以上ご一緒している団体もあります。当時のやりとりや資料を見るととても丁寧にヒアリングしているのが分かりますし、現地に行った時には一緒にご飯を食べるなど、取り引きだけではない、人と人としてのつながりが続いているからだと思います。


平島:

私はご支援者の皆さまとコミュニケーションする機会が多いのですが、アジアの人たちが身近に感じられた、ということでお礼を言われることがよくあります。今日も、80代の方からお電話があって。たまたま行ったお寺でクラフトエイドの商品を見かけたそうで、刺繍の一針一針からアジアの女性を近くに感じて、温かい気持ちで帰ってきた、というお話でした。ほかにも「子どもからのメッセージを読んで、アフガニスタンがぐっと近くに感じられました。ありがとう」と書かれた手紙が届いたこともあります。最近は皆さん簡単には海外に行けないですし、海外の人と知り合う機会も少ないので、海外の報道などを見てもなかなか身近に感じられないですよね。そんな中でも、クラフトエイドの商品や、活動地の子どもたちからのメッセージを通して、活動地のことを近くに感じられたと言って喜んでくださる。シャンティの丁寧さの表れかな、と思っています。

難民キャンプで活動する菊池

世界に広がるシャンティな人たちと進む未来

聞き手:今年はシャンティの活動地で大きな政変が起こり、先の見えない中ですが、40年後のシャンティはどうなっていると思いますか。

谷島:

40年後は団体として存在しなくてもいいぐらい、シャンティな(平和な)世界になっていてほしいというのが本当の気持ちです。ただ、災害などの時に迅速に支援ができるような仕組みや、それができる人材がいることは必要だと思います。

菊池:

現地職員には、現場に深く根差して、長年その国の課題に向き合い、困難の中にいる人々に寄り添っています。そんな彼らと東京事務所で隣に座って話をしながら、世界にまだ残っていくさまざまな課題を共に解決していくことができたらいいと思います。そのためには東京事務所の業務を英語中心にしていくなど整えるべきことはたくさんありますが、こういった変革も含め、シャンティマインドを持っている現地職員がリードするというのも一つの形だと思います。

山室:

東京事務所からだけではなく、カンボジア事務所からラオス事務所へ、といったような配置転換ができたらシャンティとして革新的ですよね。

吉田:

私が以前所属していたシーカー・アジア財団で奨学金を担当している職員は、もともとスラム出身で奨学金を受けていた子どもなんです。彼は自分が奨学金を受けて今があるから、後輩たちに奨学金を渡せる業務を担えることがすごくうれしいと熱意を持って仕事に取り組んでいます。ここからさらに40年後、こういったつながりがますます増えていくことを期待していますね。

菊池:

難民キャンプから第三国定住してアメリカに行った女の子がいたのですが、彼女が大学生になった時、シャンティでボランティアをしたいと言って夏休みにアメリカからタイに来てくれました。その子のお母さんは、渡米前に難民キャンプで図書館員をしていたのですが、彼女も小さい頃から図書館にいて、絵本を読んだり、大きくなると読み聞かせの活動をしたり、それが彼女にとってすごく良い時間だったと感じてくれていたようです。彼女のようにシャンティと何かしらの形で関わりを持って育った人が、いま世界各地にいると思うので、これからは彼らが一緒に活動する仲間になることを期待しています。


嘉味田:

新たに加わる課題、どうしても解決できない課題が残る中で、世界中にいるシャンティマインドを持った人たちが、いろいろな問題を解決する一つの大きな組織になっているというのが私の理想にも近いです。

平島:

世界中に協力できる人がいて、「こういう人が困っているから支援したい」と言った時にすぐ動ける仕組みづくりができていたらいいな、と私も思います。災害もなくならないし、大変な状況も生まれ続ける。一人ひとりが発案して、もっとスピード感を持って実施できるようになるといいと思います。相手が自分の知らない言語を話していても、進化した翻訳機などを通して意思疎通ができるようになるはずですし、そうするとより誰でも参加しやすくなっていくのではと思います。

座談会は2021年5月13日、シャンティ東京事務所の施設にある慈母会館で行われました。

企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子

編集・校正:高橋明日香

 

スピーカーの紹介

菊池 礼乃

事業サポート課 課長。

大学院留学後、2011年入職。ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所に7年駐在。2019年から東京事務所。

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山室 仁子

広報・リレーションズ課 支援者リレーションズチーム チーフ

2008年入職。カンボジア事業担当等を経て、ラオス事務所に3年間駐在。2019年から現職。

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谷島 緑

事業サポート課 課長補佐。

2019年入職。開発コンサル会社などを経て、2021年から現職。

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吉田 圭助

広報・リレーションズ課 支援者リレーションズチーム

一般企業から大学院を経て、8年間タイで活動。シーカー・アジア財団での勤務を経て、2017年入職。

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嘉味田 倫慧

クラフトエイド課 課長補佐

アパレル企業で中国駐在後、2016年入職。支援者リレーションズ課(当時名称)を経て、2017年から現職。

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平島 容子

広報・リレーションズ課 課長補佐

一般企業を経て、2011年入職。“絵本を届ける運動”を担当したのち、2021年から現職。

(肩書は2021年当時)