2022.02.24
シャンティな人たち

“子どもたちが子どもたちらしくある”ことを目指して。新卒で国際協力の道を選び、活動に取り組む想いとは

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シャンティのラオス事務所でコーディネーターを務める浅木麻梨耶(あさぎ まりや)が、2021年度アーユスNGO新人賞を受賞しました。
アーユス賞は、特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワークが1993年に団体創立20周年を迎えたことを記念して創設されました。
アーユスNGO大賞、NGO新人賞、特別功労賞の3つがあり、今回受賞したNGO新人賞は、これから国際協力NGO界を支えていくことが期待される有望な人材に対して授与されるものです。
愛媛で過ごした中学・高校時代から国際協力に関心を持ち、大学院卒業後すぐにシャンティに入職した浅木に、国際協力に関心を持ったきっかけや、活動にかける想いを聞いてみました。

シャンティ国際ボランティア会
ラオス事務所 コーディネーター
浅木麻梨耶(あさぎ まりや)


青年海外協力隊出身の先生との出会いから、国際協力への関心を深めた学生時代

シャンティに入職して4年と数カ月。事務局長にも今回の受賞にあたり「新人賞?」と驚かれるほど、入職直後から複数の海外事業に携わる浅木。彼女が「国際協力」というものに関心をもったのは早く、中学生のころだったといいます。

浅木 「通っていた中学校に青年海外協力隊出身の先生がいて、協力隊時代の話などを聞いて楽しそうだな、と感じていました。じゃあ自分がこういう仕事に就くとして、どの分野で働きたいかと考えた時に、子どもが好きだったことと、教育の分野に関心があったので、大学は教育学部に進学しました。」

大学では、学校で勉強を教える教育よりも、子どもたちが子どもたちらしくあるための”遊び”に関心を持っていたと話します。この関心を抱いたのは、自らが抱いた問題意識からでした。

浅木「愛媛出身なのですが、祖父も教員、親族にも教員が多いという家族で。高校を卒業したら、愛媛県内の大学にいって、公務員になることをおそらく望まれていたんです。大学進学時に、愛媛を出ようと思っていることを伝えたら、女の子がそんな教養を身に付けても…と暗に言われて。女の子だから、という理由で制限がかかるということを実際に自分でも経験したことで、授業で聞いていた、女の子だから学校に行けないといった社会課題と自分の問題意識がつながりました。」

国際協力への興味がより深まっていた浅木は、大学4年生の夏に青年海外協力隊の短期ボランティアに応募し、アフリカのブルキナファソという国に行くことになりました。

浅木「当時ブルキナファソは、マリから難民を受け入れていて、難民キャンプがあったんです。学校が夏休みに入ると、子どもたちはキャンプの中であまりやることがないですよね。そこで、子ども向けのプログラムを実施するというのが私のミッションで、みんなで遊んだり、手洗いなどの衛生教室をしたり。遊びがメインで、そこに学べる要素を追加したようなプログラムを実施していました。この時の活動から、難民支援、特に難民キャンプにおける子どもの遊びや教育に関心が絞られてきました。」

その後大学を卒業し、国際協力への熱意はそのままに、筑波大学の大学院に進学。スポーツを国際協力の場で生かしていくことを目指すコース(現在のスポーツ国際開発学共同専攻)が立ち上がる前に、0期生という形で学びを深めていくことになりました。国際協力の実践力を培うことを目的としたこのコースでは、海外インターンが卒業に必須。インターン先を探すなかで、シャンティとの出会いが訪れます。

浅木「インターン先を探している時に、シャンティのミャンマー(ビルマ)難民キャンプ事業事務所でインターンを見つけて応募しました。
シャンティでのインターンは、盛りだくさんな日々でした。活動地に行く前の東京事務所での研修から、事業がどのように進むのか、資金の動きや、気を付けるべきことなどについて、詳しく教えてもらいました。NGOの仕事を、インターンの幅を越えて取り組ませてもらった1年だったと思います。」

ブルキナファソでの活動(中央:浅木)

大学院の卒業を待たずに入職。アフガニスタンとミャンマー事業に邁進

インターンから帰国し、大学院の修士論文提出後、卒業まであと数カ月を残していた浅木は、卒業を待たずにシャンティに入職。入職後は東京事務所にいながら、アフガニスタン事務所の事業に3年、ミャンマー事務所の事業に1年ほど遠隔で関わることになります。

浅木「アフガニスタンは治安の悪化から駐在員を置くことができないので、東京から遠隔でアフガニスタン事務所の駐在員の仕事と、東京事務所のアフガニスタン担当をかけもつ形で担当していました。多岐にわたる仕事内容に、これもやるのか!と驚きました。」

たとえば、駐在員の仕事内容としては、学校建設と図書館事業、学校に来られない子どもたち向けの子ども図書館の運営を主に担当。東京事務所側のアフガニスタン担当の仕事としては、ご支援者さまの対応、外務省やジャパン・プラットフォームなど他機関とのやりとり、ほかのNGOと組織するアフガニスタン緊急救援ワーキンググループのとりまとめなども担当していたそう。

浅木「ミャンマー事務所の仕事を遠隔で行っていた時は、公共図書館・学校図書館の運営が主な担当でした。クーデターなどの影響を受け、少しずつ軌道にのっていた事業を縮小したり、変更したりする必要があり、調整に右往左往した1年でしたね。」

そして2021年9月からは、ラオス事務所のコーディネーターとしてラオスに駐在しています。これまでも海外事業に携わってきたものの、浅木にとっては初めての海外駐在。現場で活動できる喜びが大きいのかと思いきや、最初は少しもやもやした気持ちだったと話します。

浅木「もともと緊急救援下での教育支援に携わりたいという気持ちからシャンティに入職したので、アフガニスタンとミャンマーは関心に近い事業だったのですが、ラオスはどちらかといえば開発支援なので、ラオス事務所への異動はすこし葛藤がありました。ただ、たしかに自分の好きなことを仕事にしているけれど、自分のための仕事ではないですし、コロナ禍で現場が遠くなっている中で、最前線である現場で活動できる機会をいただいたので、自分を試してみたいと思いました。」

いざ来てみると、ラオスにはラオスの難しさや課題があり、新たに気になるキーワードが自身のなかに出てきているそう。

浅木「例えば先週行った学校は少数民族の子どもたちが多く通っているのですが、学校では法律で決まっているので、普段彼らが話していないラオ語を使わないといけないんです。国際的には母語を使ってでも学習の機会を担保すべきとされていますが、シャンティが大切にしている“文化を尊重する”という視点から見ると、どうなのかなと思ったりします。」

国際協力に関心をもった当時から変わらない、“子どもたちが子どもたちらしく”という浅木が目指す状態は、どの活動地でも軸となっていることがわかります。

タイ国境難民キャンプでのインターン|インタビューの様子

もがきながら、その過程も楽しんでいきたい

中学生のころから国際協力に関心を持ち、学生時代は国際協力について学び、新卒でシャンティに入職したことで、迷いなく進んでいるように見える浅木ですが、ほかの道を考えることもあったそう。

浅木「国際協力に関心がある学生からどんな進路を選べばいいか聞かれることが多いのですが、正解はない、というのが正解だと思うんです。ただ、国際協力業界に社会人経験を積んでから転職してきている人の方が圧倒的に多くて、私も社会人経験を積んだ方がよかったのかも、と思うことはありましたね。」

NGOで働くようになる経緯はさまざま。新卒であっても、企業や他団体からの転職であっても、それぞれの能力や経験をいかして活動に取り組んでいます。社会人経験の有無の関わらず、事業に携わる上で大事なことを聞くと、浅木はバランス能力を挙げました。

浅木「事業を動かしているのは人なので、人としてのバランス能力を問われていると感じる場面が多くあります。たとえば、自分がいま言うべきか、言わない方が良いのか。状況を判断しながら自分がとるべき立ち振る舞いを考えてコミュニケーションし、関係性を作り上げていくことが大事だと思います。あとは、場所が用意されていて、そこであなたの能力を発揮してください!という場面はあまりなくて、まっさらなところに出されて、現地の人の話を聞きながらつくりあげていくっていうのが大事なのかな、と思います。」

シャンティは少数民族や難民など、マイノリティが多く住む地域で活動しており、それぞれのアイデンティティや文化を尊重し、一人ひとりと向き合いながら事業を進めていく上でも、バランス能力は重要だということがわかります。最後にどんな世界を目指したいかを聞きました。

浅木「自分が国際協力に関心を持つきっかけになった問題意識そのままですが、生まれる場所や選別、宗教、文化など関係なく、子どもたちが自分のやりたいことを選べる世界であってほしいなと思います。もがく部分もあるけど、その過程も楽しんでいけたらと思います。」

ラオスでの活動の様子|学校のモニタリング

 

プロフィール 浅木麻梨耶(あさぎ まりや)

【経歴】

2014年
青年海外協力隊(短期)に参加。ブルキナファソのマリ難民キャンプにて、青少年活動の企画と実施。難民支援への関心が高まる
2015年
筑波大学大学院にて「スポーツと国際開発」について学ぶ。子どもの没入体験を研究。
2016年
シャンティ海外事務所にてインターンに参加。
ビルマ難民キャンプ事業事務所にて1年間の有償インターンを経験
2017年
国内大学院修了後、入職。以降、アフガニスタン、ミャンマー事務所調整員を経て、現在はラオス事務所の調整員を務める

【学歴】

・教育学士
・スポーツ国際開発学修士

【関心事】

・平和構築 / 難民支援
・ICT化

企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子
インタビュー・執筆:高橋明日香
インタビュー実施:2022年1月20日