カンボジア「教育」の昔と今
2021年の今年は、シャンティがカンボジアに事務所を開設して30年目になります。本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.301(2019年夏号)」の内容を元に再編集して掲載しております。
内戦後の復興から発展へと国が変化する中、カンボジアの教育事情も大きく変わりました。学校が増え、就学率も改善し、特に「量」の面で目覚ましい発展を遂げましたが、学びの「質」の改善が大きな課題となっています。
寺院の中にある教室で勉強する子どもたち(2000年)
子どもたちは学んでいるのか
内戦終了から数十年。国際社会の支援もあり、カンボジアの子どもたちの教育へのアクセスは大幅に改善しました。こうした中で今問われているのは、「学校教育は子どもたちの学びにきちんとつながっているのか」という教育の質の問題です。
2012年に行われた小学校低学年児童の読解能力テストでは、小学1年生の半数が文字を1文字たりとも識別できず、2年生の半数が常用単語を読めなかったことが分かりました。また2014年の高校卒業試験(高校卒業資格を得るための全国統一試験)では、それまで常態化していたカンニング等の不正に対する徹底的な取り締まりが行われたところ、合格者の割合が前年の86%から25.7%に下がるという衝撃的な結果になりました。学校での教育が必ずしも子どもたちの学びにつながっていないことが明らかになったのです。
プノンペン市内の学校校舎(1987年)
国立図書館内部(1987年)
村人が力を合わせて建設した校舎(1987年)
学びの「質」の改善とNGOの役割
格差を是正し困難な状況にある子どもたちが貧困から脱却するためには、公教育の質を改善することは不可欠です。
また、学習達成度の低さは国の発展を担う人材育成を妨げるものであり、カンボジア政府にとって深刻な問題です。
これに対しカンボジアの教育・青年・スポーツ省は、さまざまな改革を急ピッチで進めています。優秀な人材が教職に就くことを促すための教員給与の引き上げや、幼稚園から高校までのカリキュラムの改訂。教育行政では、実力ある若手行政官の活躍も目立つようになりました。
こうした時代の流れの中、NGOには学びの質の改善に貢献できる「専門性」が求められるようになっています。事業の質は厳しく評価されますが、カンボジアの人々は良い取り組みと判断すれば貪欲に取り入れると感じます。同時に複雑な政治状況の中で中立の立場を維持しつつ、中央で進められる改革が農村部の僻地や貧困層に届くよう働きかけていくことも、NGOの重要な役割ではないでしょうか。
文筆 (2019年当時)カンボジア事務所 萩原宏子
現在のプノンペン近郊の学校。校舎は古いが、教材が教室の壁一面に貼られている(2019年)
プノンペンの学校(2019年)
井戸からの水くみと植物への水まき当番(2019年)
特集「変わりゆくカンボジア、今の姿」
本記事は、シャンティが発行するニュースレター「シャンティVol.301 (2019年夏号)」に掲載した内容を元に再編集したものです。
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