2022.11.07
シャンティな人たち

企業からNGOへ。「好き」を大切に、セクターを越境して活躍_平島容子

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シャンティは、1981年の設立以来40年にわたって、絵本をひとつの軸として、アジアの子どもたちへの教育文化支援や緊急救援活動を行ってきました。広報・リレーションズ課に所属し、団体の広報業務と寄付者とのコミュニケーションに関する業務を担う平島容子。「ボランティア、社会貢献活動などに全く関心がなかった」と話す彼女が、シャンティで働くようになったきっかけとは?
事業内容に惹かれてシャンティに入職した平島容子です。

シャンティ国際ボランティア会
広報・リレーションズ課 課長代行
平島容子(ひらしま ようこ)


企業から、「関心がなかった」NGOへ

2011年からシャンティで働く平島は、広報・リレーションズ課に所属し、広報業務と、寄付者とのコミュニケーションを行う業務を担当しています。シャンティに入職したきっかけを聞いてみると、それは意外なものでした。

平島「実は、ボランティアや社会貢献というキーワードには、特に関心がなかったんです。」

新卒でアパレル会社に入り、その後広告代理店で働いていた平島。広告代理店で忙しく過ごすうちに、「もの」を扱う仕事に憧れを持つようになりました。幼少期から自身で絵本を作って遊ぶなど絵本に親しみ、絵本に関わる仕事に就くことを考えていた時に、当時の職場の人から「アジアで絵本がある国は少ない」という事実を知らされ、衝撃を受けます。

そしてその後、転職先を探すときに検索したキーワードが「絵本 求人」。結果として出てきたのが、当時募集していたシャンティの求人でした。

平島「NGOに対してイメージを全く持ってなかったので、単純にすてきな事業だなと感じました。フラットな目線で転職先の選択肢として、シャンティの求人に関心を持ちました」

そして、2011年2月、シャンティに入職することになります。

関わる人それぞれの想いに感動した転職直後

シャンティ入職直後の平島が携わったのが、“絵本を届ける運動”でした。

”絵本を届ける運動“は、1999年から始まったシャンティの基幹事業のひとつで、子どもが気軽に触れることができる本が足りない地域に、日本の絵本に現地語の翻訳シールを貼り、子どもたちが母語で読める絵本として届けます。
絵本を届ける先はカンボジア、ラオス、ミャンマー、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、アフガニスタン、タイ。手軽に参加することのできる国際協力として、多くの方に長年親しまれています。

これまでボランティアなどで活動した経験はなく、シャンティが平島にとって初めて関わるNGO。民間企業から転職して感じたことは、関わる人それぞれの想いの強さでした。

平島「入職してすぐに関わっていた“絵本を届ける運動”では、全国各地からボランティアの方が作ってくださった絵本が事務所に届いて、事務所から海外に発送するんですね。ボランティアで絵本を作ってくださっているのに、さらにお手紙で温かい言葉を伝えてくださる方がいたり…。直接的に感謝の言葉をもらうことなんて、企業で働いていたらあまりないですよね。感謝するのはこちらの方なのにそのお気持ちがとても嬉しくて。

パートさんやボランティアさんの多さにも驚きましたし、働きながら関わる方それぞれみなさん想いが強くて、感動しました。いまでも感動する場面がたくさんあります。」

2013年からは、広報・リレーションズ課にうつり、寄付者とのコミュニケーションを行う、マンスリーサポーターに関わる業務を一手に担っています。

平島「新たにマンスリーサポーターになっていただくための施策を企画したり、説明用の資料の作成をしたり、すでにマンスリーサポーターとなっている方からの問い合わせの対応や日々の連絡などを行っています。マンスリーサポーターの方に、お誕生日のお祝いにオリジナルグッズを作って贈ったりもします。シャンティの広報としては、報告会やワークショップなどのイベントの企画や運営、図書館とのつながりを構築するための業務も行っています。」

勤務中の平島

自立して業務に取り組める環境で活きた今までの経験

2011年に入職し、2013年から現在の業務を担当していますが、こんなに長く続くとは本人も思っていなかったということで、今では自身のキャリアの中で最も長く勤めている職場になっているという平島。

平島「最初はこんなに長く続けると思っていませんでした。例えば新卒の時に働いたアパレルでの人との接し方、その後の広告代理店でのコミュニケーション施策の考え方など、これまで働いてきた会社でのそれぞれの経験やスキルが、全て活用できる環境なので、こんなに続いているんだと思います。大好きな絵本にも関われていることもとても大きいです。」

絵本を扱うので力作業が多く、企業とは異なり自分たちでやることの範囲も広いですが、それぞれが自立して業務に取り組める環境だと語ります。

平島「やろうと思えば何でもできる環境なので、新しいことをたくさん覚えることができます。何かひとつ挑戦することで、新しい世界を知ることができて、面白いですね。」

出版社の編集者や絵本作家など、絵本に関わる人が集まる機会などもあり、そこで新たな出会いや、久しぶりの再会を果たすこともあるそう。

平島「かこさとし先生から生前、“本当にいい事業してますね”と言っていただいたことがあります。シャンティで働いていると、各セクターの皆さんと企業にいた時のようなお付き合いではなく、事業や取り組みに対する共感から様々なサポートや取り組みが進むことが多く、そういった場合もやりがいを感じます。」

業務の最終地点は、初めて絵本を手にする子どもたちの笑顔

NGO職員というと海外を飛び回っているイメージがあるかもしれませんが、海外の事務所で働く職員以外は、基本的に日本事務所で業務しています。年に1回程度、海外の活動地へ出張します。また、現地駐在の日本人職員が一時帰国する際や現地職員が来日する際に、子どもたちの様子、事業地の現状などを内部・外部講演で知ります。業務を進めながらよく思い出すのは、現地で絵本を初めて手にした子どもたちの笑顔や、スタッフの顔などだと話します。

平島「目の前の業務に忙しく追われると現場のことを忘れがちになってしまいますが、意識的にデスクワークの中でも現場を想像しています。そうすると、今取り組んでいる業務の最終地点を思い返すことができます。」

企業からNGOに転職し、今ではシャンティで長く働く平島だからこそできること。自身も組織も、ともに成長できる環境があります。

平島「企業と同じように、長い歴史を持つからこそ変化しにくいという課題はありますが、今後シャンティとしてきちんと組織運営をして、より拡大していきたいという想いがあります。あとは、以前の私のようにNGOや国際協力に関心のない人と、一緒にできるようなことを企画してもっとやっていきたいですね。それは私だからこそできることだと思います。」

プロフィール 平島容子(ひらしま ようこ)

一般企業を経て、2011年入職。

“絵本を届ける運動”を担当したのち、2022年から現職。

企画・編集:広報・リレーションズ課 鈴木晶子
インタビュー・執筆:高橋明日香
インタビュー実施:2019年