クーデターに苦しむミャンマーへ寺院学校ご支援のお願い
ミャンマーでは、国民の9割が仏教を信仰し、仏教が人々の心の拠り所となっています。人々は慈悲深く、共助の考えが深く根付く国です。そのような国で2021年2月1日、軍事クーデターが発生し、1年が経った今も混乱が続いています。シャンティでは脆弱な子どもたちを受け入れる寺院学校への支援を通して、混乱するミャンマーでの教育を途絶えさせないための活動を行います。活動のために3,800万円を必要としています。どうか、皆様のお力を貸していただけますようお願い申し上げます。
(写真:川畑 嘉文)
本ページでは、ミャンマーの状況、寺院学校の特徴、ご住職のインタビュー、シャンティが行う事業の内容、ご寄付の方法の5つをご紹介します。下記リンクからも各内容へ移動することができます。
1. ミャンマーの状況
2. 寺院学校の特徴
3. 寺院学校を運営するご住職のインタビュー
4. シャンティが行う事業
5. ご寄付の方法
1.ミャンマーの状況
ミャンマーは長年にわたり軍事政権の支配に苦しんだ歴史があります。2007年には「サフラン革命」と呼ばれる、仏教僧を中心とした軍事政権への抗議活動が行われ、多くの死傷者がでました。2011年には民政移管が実現し、2016年にはアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟(NLD)が政権交代を果たしました。
クーデターから1年経っても治安は悪化
2021年2月以降、人々は軍事クーデターに反対しデモ活動を展開し、公務員は市民不服従運動としてストライキを行っています。仏教僧たちも国軍による暴力の停止を要求しています。これに対して国軍は武力による弾圧を強めており、人権団体のAAPPによるとクーデター以降、市民側の死者は1,560人、拘束者は1万人以上に上ります(2022年2月18日現在)。また、少数民族が多く住む地域では、歴史的な背景からも少数民族武装勢力と国軍との戦闘が激化し、国軍による空爆が行われるなど、44万人以上の人々が国内避難民となり森やジャングルでの避難生活を強いられています。
収入減・物価上昇により苦しさを増す人々の生活
クーデター以降、経済活動が停滞し人々の生活は苦しさを増しています。失業者が増え収入が減る一方で、卵や米、油など生活に必要な食糧品の価格が高騰しています。このような状況を受け、国連開発計画(UNDP)は最悪の場合、2022年初頭には人口の約半分が貧困ライン以下の生活を強いられると警告します。
1年以上学校に通えなかった子どもたち
新型コロナウイルスと軍事クーデターの影響により、2020年6月から2021年10月まで、一時的な開校はあったものの1年以上にわたり全ての教育機関が休校しました。休校中はオンラインでの自宅学習が推奨されましたが、貧困層の子どもたちはインターネットにアクセスできず、1年以上にわたり学習の機会を失いました。
2.寺院学校の特徴
寺院学校は、基礎教育の提供を主目的として寺院が設置する教育機関です。完全無償という特徴から、特に貧困層の子ども、ストリートチルドレンや孤児といった社会的に脆弱な立場の子どもたちの受け皿として機能しています。今後増えると懸念されている不就学児や貧困層への対応も寺院学校に求められることが予想され、寺院学校の役割が益々大きくなると言えます。
(写真:川畑 嘉文)
特徴① 学校制度が始まる前から地域の人々に開かれた教育の場
寺院学校は18世紀後半以前、ミャンマーで学校が設置される前から地域の人々に教育を提供するために僧侶によって開設されました。寺院学校のおかげで人々の読み書き能力や教育水準は高く保たれていたとの記録も残っています。1993年からは政府にも認められ、正式な教育機関とみなされています。現在、ミャンマー全土に1,500校程度存在します。
特徴② あらゆる子どもを受け入れる学校
公立学校では授業料が無料で提供されていますが、制服や文房具などは各家庭が負担し調達しなければならず、経済的困難を理由に就学をあきらめる家庭もあります。一方で、寺院学校は制服がなく私服で通学でき、文房具も寺院学校から無償で提供されます。そのため、貧困層の子ども、ストリートチルドレンや孤児といった経済的に困難を抱える子どもたちも通いやすい環境が整っています。孤児など家がない子どもは寺院に併設されている寮に住むことができます。また、上記以外にも少数民族の子どもも受け入れており、社会的に脆弱な立場の子どもたちの受け皿としても機能しています。
特徴③ 寄付で成り立つ寺院学校運営
寺院学校の運営資金は教育省予算と、大半は地域住民やローカルNGO/NPO、企業、裕福な個人からの寄付によって賄われています。これらの寄付は僧侶らが自ら営業を行うなどして資金集めにご尽力されて得られています。新型コロナウイルス感染拡大および軍事クーデターの影響により人々の生活が苦しくなる中で、寺院学校への寄付も減少し寺院学校の運営は非常に厳しくなっています。
特徴④ 僧侶も入った学校運営
寺院学校の運営は多くの場合、学校運営委員会によって行われます。学校運営委員会は住職、教員、僧侶、児童の保護者、地域住民から構成されます。本委員会は資金調達、学校校舎や学校インフラ設備の維持管理、保護者の学校への関与促進、教員の採用などの役割を担っています。
特徴⑤ 公立学校と同等のカリキュラム
カリキュラムは寺院学校においても公立学校と同等のものが利用され授業が行われていますが、朝礼での読経後にご住職から子どもたちへ道徳やモラル等について講話の時間が設けられています。
特徴⑥ 地域住民や卒業生がサポートに入る教員体制
寺院学校の教員の給与は公立学校に比べて3~4倍低く、僻地に位置する学校も多いことから教員の採用が難しく、教員不足が課題となっています。しかし、寺院学校が地域に根付いた学校であることから、寺院学校の卒業生が教員のアシスタントやボランティアとして積極的にサポートに入り、地域住民も教員になるケースが多くあります。地域コミュニティとの協力の上で、学校の運営が行われています。
特徴⑦ 軍からの介入が少ない
2020年6月から休校となっていた公立学校は、2021年6月より一時的に再開されましたが、児童の4人に1人しか学校へ復学しませんでした。低い復学率の理由には、教育施設での爆破などの治安悪化や軍政下での教育内容への不安、経済的な困窮がありました。また、公立学校の全教員の約3分の1にあたる15万人の教員が抗議活動である市民不服従運動に参加し、国軍により停職処分を受けました。一方で、弊会の調査によると寺院学校には公立学校より多くの児童や教員が復学、復職しました。寺院学校は公立学校に比べて国軍の介入がほとんどないこと、完全無償であることが多くの子どもたちの復学に繋がったと考えられます。また、教員も公務員ではないため市民不服従運動に参加する教員が少ないことから教員も復職していました。2021年11月に学校が再開した現在も、公立学校に通う子どもは約半数にとどまっています。
寺院学校が抱える課題
寺院学校は校舎の老朽化、不足など学校運営上の課題を多く抱えています。在籍する生徒の数に対して教室数が不足しており、狭く老朽化した校舎で子どもたちが授業を受けています。新型コロナウイルスの感染予防の観点からも過密状態を回避する必要があり、教室数の増加が急務となっています。
また、公立学校の56%には設置されている学校図書館は、寺院学校の29%にしか設定されていません。学校図書館は公教育で培う読み書き計算能力のみならず、非認知能力と呼ばれる批判的思考や共感力、想像力、コミュニケーション能力の育成も目指す体験的な活動の機会を提供し、子どもたちの学習に大きな役割を果たします。しかし、寺院学校の運営は地域住民からの寄付を中心に賄われているため、学校校舎建設や学校図書館設置の資金的余裕はありません。
(写真:川畑 嘉文)
3. 寺院学校を運営するご住職のインタビュー
寺院学校を運営するチャパラン寺院学校校長のU Kaymar Sara住職に寺院学校を設立した背景、クーデター後も開校し続ける思いを伺いました。
(写真:チャパラン寺院学校校長 U Kaymar Sara住職)
Q:寺院学校を開校した理由や寺院学校ならではの特徴を教えてください。
A:私は貧しい村に生まれましたが、周囲の助けもあり、幸運にもスリランカの大学院に進学することができました。卒業して村へ帰ると、村では未だに道路は未整備で病院に行けずに亡くなる方がおり、子どもたちは親の手伝いをするために学校に通えていませんでした。このような状態を見て、非常に申し訳なく思うと同時に、昔からの夢であった寺院学校の開校の必要性を強く感じたのです。寺院学校は公立学校と少し異なり、授業を工夫する余地があります。例えば、私たちの学校ではスポーツと文化に力を入れており、早朝や夕方に独自にサッカーや伝統的な民族舞踊のクラスを取り入れています。
Q:政情不安が続く中で寺院学校が果たす役割は何でしょうか?
A:多くの寺院学校が本状況下でも開校しています。貧しくても学びたいという思いがある子どもたち、治安への不安から公立学校に通いづらい子どもたちが寺院学校に通うことができます。寺院学校はこれらの子どもたちの大切な学びの場なのです。
Q:寺院学校で学ぶ子どもたちにはどのような将来を期待しますか?
A:私自身も寺院学校で学んだ後、スリランカへ留学したりマレーシアでも過ごしました。子どもたちにも、奨学金などを掴んで海外で学んでほしいと思います。そして、また村へ帰ってきて、母国の人々や地域のために働いてほしいと願っています。仏教の阿毘達磨では、学ぶことは人や地域への思いやりを知ることであると教えられています。宗教の違いは対立ではなく、それぞれの宗教の長所と短所を認め合い、皆で協力し合うべきです。子どもたちには、これらを学んで、平和で繫栄した社会の良きリーダーとなることを願っています。
4. シャンティが行う事業
シャンティではクーデター以降も職員の安全に留意しながら、ミャンマーの子どもたちの教育の機会を途絶えさせないために、事業を継続しています。上記のような課題に対応するため、校舎建設や学校図書館建設、図書館活動を通じて、子どもたちが安全で快適な空間で学習できるような環境整備と学習機会の確保を実施します。事業には3,800万円が必要です。どうか皆様のお力をお貸しいただけますようお願い申し上げます。
(図:事業で行う活動詳細)
事業対象の寺院学校(予定)の様子
(写真:事業対象校であるティンカヤン寺院学校の外観。教室が不足し、宿舎も教室として利用している。)
(写真:教室が不足し宿舎で勉強する子どもたち。)
5. ご寄付の方法
郵便振り込みの場合
郵便局備え付けの払込取扱票をお使いのうえ、下記の口座番号と加入者宛にお振り込みください。
※振込手数料は無料です。
※郵便局の窓口で手続きし、振込手数料が無料の口座であることをお申し出ください。ATMやゆうちょダイレクトからの送金は、手数料がかかりますのでご注意ください。
郵便振替 | 00150-9-61724 |
加入者名 | 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 |
※通信欄に「ミャンマー寺院学校」と明記してください。 |
クレジットカードの場合
以下のサイトよりお手続きください。
シャンティ クレジットカードからのご寄付申込ページ
問い合わせ先
シャンティ国際ボランティア会
東京都新宿区大京町31 慈母会館2・3階 担当:日比、松本
電話:03-5360-1233 メール:overseas@sva.or.jp