子どもの未来を育む場所 映像「奇跡の図書館」
皆さんはカンボジアにある「図書館」を知っていますか。
カンボジアには、1996年にシャンティが初めて建設した図書館があります。
この図書館を長年守ってきた小学校校長のノッ・スィアンさんは言います。
「ここは奇跡の図書館だ。」
なぜ、奇跡だと思いますか。カンボジアの歴史とともに振り返ってみましょう。
カンボジア ダイアット小学校にある図書館
悲しき歴史、ポル・ポト政権による知の破壊
1970年代、カンボジアの隣国ベトナムでは米国とベトナムとの間でベトナム戦争が勃発していました。それに巻き込まれる形でカンボジアには米国に支援されたロン=ノル政権が1970年に誕生します。
1975年4月17日、米国への服従に抵抗したポル・ポトが、ロン=ノル政権を追放し、新政権を樹立しました。
しかし、ポル・ポト政権が目指したのは「独裁的な共産主義」でした。文化や教育を徹底的に破壊し、新政権は知識を持つ人々の造反を恐れました。また、抵抗する人は容赦なく殺害し、その数は推定170万人と言われています。
小学校校長のノッ・スィアンさんは当時小学生でした。突然教育の機会を奪われ、知らない場所で農作業に従事するよう命令されました。そう、ポル・ポト政権が目指したのは農業主体の極端な共同体でした。
1979年1月、ベトナムによる大規模なカンボジア侵攻により、ポル・ポト政権は追放されます。
ポル・ポト政権後も知の破壊の爪痕は残ったまま
先生もいない、本も焼かれてしまった―――
小学校校長のノッ・スィアンさんは言います。
「学ぶ機会を失われた子どもはどうなると思いますか。物事を、その時の感情で判断し、深く考えることができなくなってしまいます。」
政治や社会の変遷に翻弄され、学びたくても、学ぶことができない子どもたちがたくさんいました。
シャンティとの出会い
しかし、ここで転機が訪れます。
1997年、小学校校長のノッ・スィアンさんはシャンティの図書館活動に出会います。
シャンティはカンボジアの地で本を配布して、図書の整備を始めました。
子どもたちに絵本の読み聞かせをはじめると、子供たちは目をキラキラと輝かせながら絵本を見ています。
「とにかく嬉しかった!」
小学校校長のノッ・スィアンさんは笑顔で話します。
シャンティは焚書で焼かれたカンボジアの民話を集め、絵本にする活動も行いました。
プノンペン事務所の手束アドバイザーは、「絵本は色々な民族の風習が入っています。自分が何者であるかを理解し、それを次の世代に受け継いでいくことは重要です。」と話します。
絵本を読むことは子どもたち自身が自分で考え、自分を理解し、また他者をも理解することができるようになります。この「奇跡の図書館」はカンボジアの子どもたちの未来を再び創りました。
子どもの希望や可能性を一瞬で破壊してしまったカンボジアの歴史に心が痛みます。
カンボジアの子どもたちがまた安心して学べる環境に身を置け、未来を育むことができるようになったこと、それこそが奇跡ではないでしょうか。子どもたちの笑顔を見ていると学ぶことは楽しいと改めて思いますね。
図書館が設立されてから20年以上たった今でも、たくさんの子どもたちがこの図書館にやってきます。子どもたちの学ぶ機会が当たり前にあること、それを守るためにも、シャンティは現地の人と共にこれからも活動していきたいと思います。
皆さんも是非、こちらのYouTubeから、カンボジアの「奇跡の図書館」を訪ねてみてください。
あなたは何を思いますか。
こちらから小学校校長のノッ・スィアンさんの「奇跡の図書館」に対する思いも聞けます。
担当 広報・リレーションズ課