2021.03.07
海外での活動

ネパール事務所の新たな挑戦~ふるさとを知る授業を作る~

ネパール

みなさんのふるさとは、どこですか?今は、どんな街で暮らしていますか?
そして、どれだけその街を知っているでしょうか?

ネパールには、子どもたちが自分の暮らす地域について学ぶ「地域学習」という科目があります。日本の学校での社会科や、ふるさと学習、小学校低学年の生活科に近い科目で、暮らしている地域、”ふるさと”の文化や伝統、特色について勉強する科目です。

新科目、「地域学習」が全国に導入、しかし……

ネパールでは、平等、包摂性、多様性、そして地方分権化が重視された新しい憲法の制定を受け、教育カリキュラムも刷新されました。その際、この「地域学習」という新しい科目が創設され、ネパール全国に導入されました。地域学習の授業では、日本の学校の「総合的な学習の時間」のように、子どもたちの考える力や主体性を高めるため、グループディスカッションや、フィードワーク、体験学習など児童を中心とした授業を行うことになっています。

シャンティは、この地域学習という科目を通じて、教員と児童の双方向型の授業を実践することで、教育の質を改善するため、先住民族地域における地域学習のカリキュラムの開発・普及事業を開始しました。事業地は、先住少数民族が暮らしているマクワンプル郡ラクシラン自治体です。

事業地の子どもたち

事業地、マクワンプル郡ラクシラン自治体の子どもたち

ネパールの教育現場では、長年、教員による一方向型の暗記教育が実施されてきました。その影響と、新憲法制定前の中央集権化した教育行政の名残があり、ほとんどの郡や学校は人材や資金不足のため、その地域の独自のカリキュラムや教材を作成できず、充実した地域学習の授業を実施できていません。

そういった自治体の一つである、ラクシラン自治体は、先住民族を中心に貧しい世帯が多く、学校の出席率も全国平均と比べて低く、その原因の一つとして、教育の質が低いことが問題となっています。ラクシラン自治体は、現状を変え、教育の質を改善しようと、意欲的に取り組んでいます。

ネパール事務所、初めての「授業」づくり

2020年3月、1年前に開始したこの事業は、ネパール事務所にとって初めてのカリキュラムを作る、つまり学校の「授業」を作る事業です。まず、シャンティとラクシラン自治体の行政や教育関係者は一緒に、ラクシラン自治体の特徴や、授業の中で何を子どもたちが学ぶべきか、ワークショップを行いながら考えました。その後、どんな内容をどの学年で勉強するかを決め、地域学習のカリキュラムを作成しました。次に、カリキュラムに沿って、地域学習の教え方について記した教員用の手引きと1年生~5年生の教科書を作成しました。今後は、6年生~8年生の教科書を作成します。

作成した地域学習のカリキュラム

作成した地域学習のカリキュラム

作成した地域学習の教科書

作成した地域学習の1年生~5年生の教科書

先日、事業地、ラクシラン自治体の学校の教員に対し、児童を中心とした地域学習の授業方法について、研修を実施しました。研修の様子は下記のブログでご報告しています。
2021年2月19日【地域学習事業の教員研修を実施しました】

この研修は、現地の2つの新聞でも取り上げられ、注目されています。

また、地域学習の教材の一つとして、ラクシラン自治体について歌った「ラクシランの歌」も制作されました。

ラクシランの歌 歌詞 一部抜粋

親愛なる私たち、我らのラクシラン
花々が咲き誇る緑豊かな森に勇気にあふれた村がある。
様々なカーストや信仰、言葉をつなぎ合わせて 一つの花輪を編んだなら
私たちを見守っている洞窟と滝が喜んで祝福してくれる
異なる文化や芸術、アイデンティティでも
お互いへの敬意と自尊心をもって、私たちは村を作っていく
私たちの道のりには情熱と勇気があり、
私たちがラクシランの地を創造でいっぱいにしよう
親愛なる私たち、我らのラクシラン

まだ、新しいカリキュラムを使った地域学習の授業は始まっていませんが、子どもたちが元気いっぱいに、ラクシランの歌を歌う日が楽しみです。

ふるさとを知ること、好きになること。誇りに思うこと。それは、将来、子どもたちがふるさとを離れることになったとしても、心の支えになると思います。

3月、春は出会いの季節とも言われますが、なかなか遠出が難しい状況だからこそ、地元や身近な自分の周りに目を向けてみると、今まで気づかなかった新たな出会いや発見があるかもしれません。

事業サポート課 竹本