「絵本を見るのも読むのも初めて」カイン州での新たな活動を終えて
皆さん、こんにちは。ミャンマー・パアン事務所のヤンナイです。
パアン事務所があるカイン州は、国内でもよく知られた州の一つです。この州では、数十年にわたり、少数民族武装勢力と政府軍との間で紛争が起きています。そのため、あらゆる分野で支援ニーズが高い地域の一つです。
カイン州でのシャンティの初めての試み
カイン州の寺院学校への教育支援活動は、シャンティにとって初めての試みでした。以前はタイ・ミャンマー国境に位置する帰還難民の村にて図書館を併設したコミュニティ・リソース・センターの支援を実施していましたが、寺院学校支援は行っていませんでした。寺院はミャンマーの教育制度において重要な役割を担っています。私立の学校に通う余裕のない子どもたちや、公立の学校に行きたくない子どもたちは、寺院学校を頼りにしています。近年、新型コロナウィルスの感染拡大や不安定な政治情勢により、公立学校へ2年近く通えない子どもたちがいました。そのため寺院学校が子どもたちが教育を受け続けることができる学びの場のひとつとなりました。今年度は寺院学校と尼僧学校を対象として学校図書館建設や図書室設置の活動を進めました。
“絵本を見るのも読むのも初めて” 子どもたちからの嬉しい声
学校図書館建設は、建設や研修も含めて11月にすべての工程が完了しました。開館式では、初めて絵本の読み聞かせをする子どもたちの笑顔が見られました。また、地域住民や校長先生の喜びの声も聞くことができました。ある学校運営委員会のメンバーは、「学校図書館の建物と本が贈られたことは、本当に信じがたいほど嬉しいです。子どもたちには毎日学校図書館を利用し、読書を楽しんでほしいと思っています。」と話してくれました。また、子どもたちからは「絵本を見るのも読むのも初めて。こんなにもたくさんの絵本がある学校図書館が学校にできて嬉しいです。」という声も聞かれ、私はとても嬉しくなりました。
紛争地域で活動を継続することの難しさ
直面した様々な苦労もこうした喜びの声で吹き飛んでしまいそうですが、現在の不安定な状況の中で、活動を進めていくことは容易ではありませんでした。様々な課題がありました。対象校の選定がそのひとつです。カイン州には多くの候補校がありますが、その中から建設支援に適した学校を選ぶことは困難でした。カイン州は現在、国内の紛争地域の一つとなっています。そのため、治安上の理由から候補校として選定することが難しい、アクセスが可能であっても選定基準に合わないといった状況が多く見られました。しかし、最終的には学校図書館建設に適した学校を選定することができました。
もう一つの大きな課題は、銀行関係でした。現金の引き出しに制限があるため、希望する金額を引き出せませんでした。そのため、工程の遅延等が生じることになりました。また、活動を円滑に進めるためには、各関係者と慎重に交渉する必要もありました。しかし、すべての活動を計画通りに完了でき、安堵しています。
ミャンマーの教育を支えてくださる皆様へ
現在、ミャンマーは政治的に不安定な状況にあります。クーデターに反対する勢力と軍との衝突が国中で起きています。毎日のように殺人、焼身、犯罪のニュースが流れています。人々の生活は不安定で、日々上昇する物価の影響にさらされている。現在、解決の糸口は見えず、この状況がいつ終わるかは誰にもわかりません。紛争のため、多くの子どもたちが苦しんでいます。学校は閉鎖され、子どもたちは教育の機会を失っています。私は、この状況が早く終わることを願っています。
教育は国にとって非常に重要であり、学校図書館は教育の基礎となるものです。子どもたちが学校図書館で本を読むことを楽しんでくれることを期待しています。子どもたちに質の高い本を読む機会を与え、学校図書館のサービスを受けられるようにしてくださったご支援者の皆さまに心から感謝を申し上げたいと思います。本当に嬉しい限りです。また、活動を実施するために協力し努力してくれたカウンターパートや同僚たちにも感謝します。
最後に、学校図書館を通じて子どもたちが生きるために必要な技能を身に付け、未来に希望を持てるよう、引き続き活動を頑張っていきたいと思っています。新しい一年が皆さまにとってご多幸でありますよう、お祈り申し上げます。
ミャンマー事務所 ヤンナイ