• TOP
  • トピックス
  • イベント情報
  • 【開催報告】6/1オンラインイベント「アフガニスタンを忘れないで ~学ぶ機会を奪われた女の子たちにできることとは~」
2023.06.08
開催報告

【開催報告】6/1オンラインイベント「アフガニスタンを忘れないで ~学ぶ機会を奪われた女の子たちにできることとは~」

アフガニスタン
イベントレポート

 

シャンティは2023年3月7日から4月26日の50日間にわたって、READYFOR クラウドファンディングプロジェクトに挑戦しました。「アフガニスタンで女子教育継続を。学ぶ権利、夢と希望を取り戻すために」と題したこのプロジェクトは、多くの方のご協力により成立という形で終えることができました。

READYFORプロジェクトページはこちら

今回シャンティ アフガニスタン事務所職員の来日に合わせて、プロジェクト成功のお礼とアフガニスタンの現状を伝えるオンラインイベント「アフガニスタンを忘れないで~学ぶ権利を奪われた女の子たちにできることとは~」を6月1日に実施し、70名以上の皆様にご参加いただきました。

イベントでは、シャンティがアフガニスタンに事務所を構えてからの20年間や、アフガニスタンの教育状況、今回クラウドファンディングにて支援を募った、コミュニティベースの教室事業について、現場の声やエピソードをお伝えしました。最後の質疑応答では、参加者からは積極的な質問がなされ、その場でアフガニスタン職員がそれぞれの経験に基づいて回答しました。


 

登壇者

山本 英里

シャンティ国際ボランティア会 事務局長 兼アフガニスタン事務所 所長。2001年にインターンとしてタイ事務所に参加。2002年、ユニセフに出向しアフガニスタンで教育復興事業に従事。2003年より、シャンティのアフガニスタン、パキスタン、ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ、カンボジア、ネパールでの教育支援、緊急救援に携わる。アジア南太平洋基礎・成人教育協議会(ASPBAE)理事。2019年より現職。

喜納 昌貴(きな まさたか)

シャンティアフガニスタン事務所 事業調整兼アフガニスタン担当。国内の大学卒業後、北欧の教育に興味を持ちフィンランドの大学院へ進学。院生時代に英語教師としてミャンマーでインターンシップを経験。大学院修了後、日本へ帰国し地元沖縄の公立中学校で勤務。その後、2022年4月より現職。

ジャドさん(仮名)

アフガニスタン事務所副所長。アフガニスタンの医療系の大学を卒業。在学中の2004年、シャンティにパート職員として勤務。その後2008年6月に正規職員として入職。2012年に事業運営の経験を経て、2018年に渉外担当に昇格。2019年からは緊急人道支援事業のプロジェクトマネージャー、2021年からはアフガニスタン事務所副所長として勤務。

ムサウェルさん(仮名)

アフガニスタン事務所プロジェクトマネージャー。アフガニスタンの大学を卒業後、選挙事務所にて市民教育と教員ガイドブックの編集者として勤務。その後、調整員としてJICAの識字教育事業に従事。また、ユネスコのノンフォーマル教育事業で所長代行の勤務を経て、2020年11月にシャンティに入職。

マララさん(仮名)

アフガニスタン事務所プログラムアシスタント(事業補佐)。アフガニスタンの大学で経済学を専攻。卒業後4年間財務省で勤務。その後、現地のコンサルテーション会社での勤務を経て、2013年6月シャンティに図書館スタッフとして入職。図書館職員のトレーナー、図書館スタッフのリーダーとしての経験を経て現在に至る。

 

アフガニスタンの概況

山本:2001年から一昨年8月の政変前までの20年間の教育復興支援は、ゼロからと考えれば大きな成果を遂げているとも言えます。特に、女子児童の就学率、女性教員の割合、識字率などは、大きく上昇しています。

一方で、政変以前から治安は改善せず、国土の半数以上で武力衝突が続いています。支援を届けることが困難な地域も、増加しています。国内避難民の増加も見られ、370万人以上の不就学児童が確認されています。昨年3月に女子中等教育が正式に禁止されたことを受け、中等教育レベルで女子の生徒が通えているケースは34県中7県にとどまっています。

喜納:こうした状況を受けて、シャンティでは公教育の支援を継続していますが、コミュニティベースの教室事業などのノンフォーマル教育の支援も並行して実施しています。加えて、子ども図書館の運営も行っています。政変前には、女性の教育改善が遅れていた地域で識字教室も実施していました。政変後は女性が集まる場を提供することが難しいため、個別訪問などの形態に切り替えて啓発活動は継続しました。

今回READYFORクラウドファンディングプロジェクトにて支援を募ったコミュニティベースの教室事業は、アフガニスタン東部の山岳地帯を対象としています。教室数は500で、家や公共施設の一画などの地域に既にある建物を使用して教室化し、子どもたちの学習の場を提供する事業です。対象の子どもの数は15,000人で、うち女子生徒は9,513人です。

現場から見るアフガニスタンの貧困

ジャド:アフガニスタンでは各地で貧困という課題を抱えています。市場に買い物に出かけると、子どもたちはパンを買うお金を求めて物乞いにやってきます。子どもたちに食べさせるためのお金を恵んでほしいと嘆願する大人の姿も見られます。

そんな中で、シャンティは食料支援も実施しています。限られた食料を最も困難な状況下にある家庭に配布するために調査を実施していますが、その過程でこんな家庭があったと聞いています。ある一家のお父さんは紛争中に爆撃に遭い、両脚を失いました。この家庭を訪問した時、子どもたちは悲しそうに涙を浮かべていましたが、私たちの訪問の目的が食料を届けることであると伝えると、ぱっと表情が明るくなりました。父親によると、ここ何日か子どもたちに与えられる食べ物が無く、同じく厳しい状況にある近所の人のくれる食べ物で、何とかしのいでいたそうです。

お母さんが食料を受け取りにやってきましたが、3か月分の食料を見てたいそう喜んでいました。

タリバン暫定政権下での女子教育

ムサウェル:2021年8月の暫定政権の政権奪取から現在まで、12歳以上の女の子は学校に行くことができていません。影響を受けているのは、女の子だけではありません。女性教員が中等教育以上で男子生徒を教えることを禁じられたため、授業を受けられずにいる男の子もいます。

多くの親が、この状況に胸を痛めています。私には3人の娘がいますが、毎日「お父さん、いつになったら学校に行けるの」と聞かれます。「ごめんね、分からないんだ」と答えるのは、本当につらいです。

ある女子生徒は、いつ学校が再開するかと考えるうちに、心を病んでしまったそうです。学校の校舎を絵に描き、学校の周りをうろつき、いつかまた学校に行けるようになることを切実に願っています。

またある女性教員は、政変以前は中学生に科学を教えていましたが、政変後はそれが禁じられたために、小学校2年生の補助教員とならざるを得なかったそうです。再び自分の専門である科学で教壇に立つことを心待ちにしています。

多くのアフガニスタン人は、すべての子どもに教育の機会が提供されることを願っています。国際社会が女子教育の権利を担保するよう働きかけることを希望しますが、それが実現するまでの間に草の根でできることを模索し続けています。

 

アフガニスタン人女性として

マララ:25年前、多くの他のアフガニスタン人の女の子と同様、私も苦しみを味わっていました。食料は無く、教育の機会も失われました。その当時、両親は私たちを食べさせるために非常に苦労していました。父はいつも食べ物を、母は絵本などの読み物を私たちに探してくれました。学校に行くことができない間、母は先生の代わりとなっておしえてくれました。こうして母の努力のお陰のおかげで家庭内で勉強を続け、知識を得ることができました。幸運にもその後学校教育に進み、無事大学を卒業することができました。

この経験から私は、女性にとって教育がどれほど重要であるか、身をもって感じています。教育支援に携わることを願い、それを叶えることができました。私の両親だけではなく、多くの親が子どもに教育を受けさせたいと願っています。しかし、私の家庭のように家庭内で教育を実施することは簡単では無く、私たちのような教育支援を受けて何とか機会を得ています。もし私たちが事業を止めてしまったら、子どもたちは読み書きのできない大人になってしまうでしょう。

 

READYFOR目標達成のお礼

喜納:2021年8月の政変直後は大変混乱し、タリバンからの迫害を恐れて日本を含む国外へ退避したアフガニスタン人もたくさんいます。アフガニスタンに残っている人たちも厳しい状況下にあり、先行きの不透明な中、不安を抱えながら生活しています。しかし、私たちも地域の方々に支えられながら、できることが少しずつ増えてきているようにも感じます。子どもたちの成長は、止めることはできません。政治的解決が必要な反面、今を生きる子どもたちに、あらゆる方法で教育の機会を提供し続けることを諦めてはなりません。

皆様の支援は、現地の子どもたちの希望になっています。また、国際社会がアフガニスタンのことを忘れていない、というメッセージにもなっています。心からお礼を申し上げるとともに、引き続きアフガニスタンをどうか支えてくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

 

質疑応答

Q.コミュニティベースの教室事業に対しての、長老の方たちの感想や印象はどのようなものですか。

A.ジャド:地域の長老の方々は、教育を継続することの重要性を理解されています。この活動を暫定政権に説明するのは長老の方々ですが、活動の課題や暫定政権の要求など、さまざまな調整を担ってくれているおかげで、事業の実施が叶っています。

 

Q.コミュニティベースの教室に置いてある絵本は、どのような種類や内容ですか?

A.ムサウェル:暫定政権に認められた絵本が配架されています。私たちは、すべてのコミュニティベースの教室に図書コーナーを設置していますが、そこにはシャンティが過去に出版したものや日本の絵本も、一部置いてあります。

 

Q.事業の成果を実感したエピソードがあれば、教えてください。

A.ジャド:図書館の活動にやってくる子どもたちは、経済的に厳しい生活を送っています。外で見かける子どもたちは悲しそうな表情をしていますが、子ども図書館での子どもたちは楽しそうに先生の読み聞かせに聞き入っています。そんな子どもたちの様子を見るときに、やりがいを感じています。

A.ムサウェル:私たちが現在コミュニティベースの教室事業を実施している地域はへき地で、旧政権下においても教育支援が行き届いていませんでした。この地域にとっては学びの機会を得ること自体が初めての経験だったのです。山道を4、5km歩いて学校に通っていた子どもたちが、村の中に教室ができたことで嬉しそうに通う様子が見られます。図書コーナーの絵本を家に持ち帰り、習った読み聞かせを家庭でも実践しているという声や、親から事業の継続を希望する声も聞かれています。

A.マララ:私は図書館活動に携わっていますが、図書館に通うある子どもの話を聞いて、大変嬉しく思いました。6人姉妹で11歳のマリーちゃんのエピソードを紹介します。両親は政変以前は仕事を持っていましたが、政変後に失業してしまい、マリーちゃんも働かなければならなくなりました。勉強や仕事の合間を縫って図書館に来て、絵本を読んだり活動に参加したりしています。また、借りた絵本を読めるようになり、マリーちゃん自身も家で妹たちに読み聞かせをしているそうです。未来を諦めず、希望を持ち続けられる図書館という場所を提供できているということを実感し、とても嬉しく思いました。

 

Q.政変後は、どのような点に気を付けて授業をしていますか?

A.ジャド:安全管理や治安の問題に気を付けています。現地のネットワークでつながり情報共有をし、助言に従ってできる限り職員の安全を確保するようにしています。

 

Q.絵本を届けることによって、子どもたちにどんな思いを伝えたいですか?

A.喜納:現地によると、絵本を初めて開くという子どもも多いと聞いています。私は絵本に触れる子どもたちの笑顔に、とても感動しました。絵本がもたらすこの一瞬の喜びをつなげて、厳しい環境に置かれる子どもたちの希望にしたいと思っています。私は前職も教員でしたが、子どもたちには教育を通して生まれる喜びを胸に、将来に向かって歩んでほしいと願っています。

 

Q.事業を継続するうえで、最も難しいことは何ですか。

A.山本:職員の安全確保を図りながら、事業を実施することです。地域住民の力を借りて何とか事業ができていますが、不安や危険は多々あります。20年前にアフガニスタンでの活動を介した時も、少しずつできることを積み重ねながら、活動の幅を広げてきました。初心に戻って職員とも様々な協議を重ねながら、慎重に事業を行っています。

 


 

アフガニスタン職員の生の声から、現地の非常に厳しい状況とともに、現地の教育継続のための支援を止めてはならないという強い決意が伝わってきました。私たちシャンティは、困難な状況下でも教育を届ける道を模索し、現地に寄り添い続けるべく、事業を継続してまいります。

改めて、アフガニスタンや弊会の事業に関心をお寄せ下さった皆さま、READYFORプロジェクトに参加頂いた皆さま、本当にありがとうございます。これからも、アフガニスタンのことを忘れず、アフガニスタンの未来のため共に歩んでくださるよう、お願い申し上げます。

シャンティのアフガニスタンでの取り組みはこちらから