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2022.11.22
開催報告

【開催報告】オンラインイベント 緒方貞子シンポジウム「あなたなら何をしますか?」 -緒方貞子さんから何を学び、どう生きるか-

イベントレポート

写真:独立行政法人国際協力機構(JICA)

日本人で初めて第8代国連難民高等弁務官や独立行政法人国際協力機構(以下JICA)理事長を務めた緒方貞子さんが2019年10月に亡くなってから、今年で3年になりました。

 

11月15日にJICA主催により実施されました本シンポジウムは緒方貞子さんの考えを振り返り、現在を生きる私たちが活かせることは何かを考えていく機会を提供することを目的としています。また、パネリストとしてシャンティの山本英里事務局長兼アフガニスタン事務所所長が登壇しています。

 

本シンポジウムは2部構成で、第1部ではフィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官をはじめ各界からのビデオメッセージを紹介するとともに、第2部では様々な分野で活躍するパネリスト5名が登壇しています。また、途中緒方貞子さんの生涯をまとめたショートムービー「小さな巨人、緒方貞子のことば」が上映されました。

 

本シンポジウムの開催報告は以下の通りです。

 

  • 【第1部】ビデオメッセージの紹介

・MISIA(ミーシャ)

歌手のMISIA(ミーシャ)さんからのビデオメッセージでは、2013年のスイスのダボス会議でのトークセッションの際に緒方さんにお会いし、とてもチャーミングな方であったと述べていました。このシンポジウムをきっかけに、よりよい世界になることを祈っておられました。

 

・フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官

また、フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官からのビデオメッセージでは、緒方さんは、どんな困難な状況にもひるまない若い世代のモデルであり、常に難民や脆弱な人を助けていた人物であったと述べていました。

 

・中満泉国連事務次長・軍縮担当特別代表

最後に、中満泉国連事務次長・軍縮担当特別代表は、緒方さんが国連難民高等弁務官に着任されたばかりのころに初めてお会いし、これまでとは異なるリーダーであったと話しました。中満氏は、緒方さんよりリーダーシップの本質を学んだと述べており、今の若者に向けて、それぞれの持ち場でリーダーとなり、変革者であってほしいとメッセージしました。

 

【第2部】パネルディスカッション 

テーマ:「あなたなら何をしますか?」-緒方貞子さんから何を学び、どう生きるか-

NHKワールドNewsline InDepthキャスターである道傳愛子さんをモデレーターとし、シャンティの山本英里事務局長兼アフガニスタン事務所所長(以下山本)をはじめ、赤星聖神戸大学大学院国際協力研究科准教授(以下赤星)、井上正也慶應義塾大学法学部教授(以下井上)、中柴春乃UNHCRコックスバザール事務所上席難民保護コーディネーター(以下中柴)、島田具子国際協力機構(JICA)ガバナンス・平和構築部平和構築副室長(以下島田)がパネリストとして参加しました。また、事前にいただいた質問に登壇者が回答するなど、活発な意見交換がなされました。

 

各登壇者は、自身の専門と照らし合わせながら、緒方さんの印象を次のように述べています。

 

井上「緒方さんは研究者としても一貫していて、関係者にどんどん飛び込んでインタービューしていました。また、緒方さんの研究業績は今日においても評価されています。」

 

山本「緒方さんとは直接お会いしたことはないのですが、20代でこの業界に飛び込んだときから、緒方さんが人道支援分野で活躍する姿をよく耳にしていました。シャンティは1981年のカンボジア難民支援から設立した団体ですが、緒方さんが広く民間に難民支援への関心を呼びかけた影響も少なからずあると聞いています。2002年に、大規模な教育復興支援へNGO代表としてユニセフに出向した際には、緒方さんの現場主義を実践し、アフガニスタンの学校を隅々まで訪問しました。シャンティはどんな状況下でも復興を視野にいれた人道支援ができるよう、教育支援に力をいれています。」

(緒方さんの現場主義とシャンティの教育支援の関連性を話す山本)

 

〈困難への対処法を教えてください。〉

また、事前にいただいた質問では、「パネリストの皆さんは困難に直面したとき、どのように対応していますか」といった疑問がよせられました。

 

山本「何が出来ないのかを考えるのではなく、常にその人が必要なことを考え、できることから努力していくことが大切です。そうすることで、現場のほうから解決の糸口が出てきます。」

 

中柴「難民の声に耳を傾け、一緒に考えてください。また、ひとりの人間として共感することも大切です。」

 

〈なぜ国外へ支援をするのでしょうか。〉

日本国内においても格差や貧困がある中で、国外支援をすることは理解求められないのではないかという質問に登壇者は次のように語ります。

 

島田「緒方さんなら、どんな困難にも解決策は必ずあるので、現場に行きなさいと言うことでしょう。また、日本も他国とお互い学びあうことができるので、理想に近づいていけるのではないでしょうか。」

 

山本「日本国内の問題は世界の問題と繋がっていることが多いです。根本的な問題への解決には、世界の人と繋がることが大切です。日本は長らくカンボジアへの支援をしてきました。東日本大震災が発生したとき、現地でその日暮らしする人が、日本の震災を耳にして「日本の人にこれ(カンボジアの紙幣)を届けてほしい」と言われたことを覚えています。」

 

中柴「国際社会との連携が必要だと思います。また、政府だけではなく、地方自治体や市民社会が連携して、遠い国の問題にともに共感することも大切だと感じます。」

 

〈学生時代に必要なことは何でしょうか。〉

学生時代に経験しておいてほしいことをパネリストの皆さんは次のように語ります。

 

井上「しっかりと本を読み、良質な歴史も読んでください。これらは社会に出たあと役に立ちます。緒方さんは実務の社会でこれを実現した人物です。」

 

赤星「現場の複雑さを理解し、現場と本を両立してください。これは結果、自分の判断に活きてくるはずです。」

 

山本「学生時代は内向的でしたが、意を決しタイを訪問しました。日本から一歩外に出ると、たくさんの人に出会えます。是非勇気を出して外に出て欲しいと思います。」

 

中柴「どんなスキルでも構わないので、自分が興味のあることを突き詰めてください。将来、その得意分野が活かせることでしょう。」

 

島田「何か難しい問題に直面したとしても、逃げずに立ち向かってください。この訓練が将来役に立つはずです。」

 

最後に、各パネリストの皆さんは一言メッセージを添えられました。

 

シャンティの山本は次のようにまとめています。

「成果は相手の人々が出してくるもの。」

山本「一人ではなく、何ができるか一緒に考えることで、結果として成果が出てくると思います。」

(一言メッセージを述べる山本)

モデレーターを務めた道傳さんは以下のように締めくくり、パネルディスカッションを終えました。

道傳「緒方さんからの宿題は番組を作るだけではなく、今回のシンポジウムのように異なる分野のひとと対話する機会を作ることもまた課題であったのでしょう。」

 

本シンポジウム全体の最後に、JICA田中明彦理事長が登壇されました。田中理事長は、「パネリストの皆さんは若い世代であったことが印象的でした。これは、緒方さんが世代を超えてインスピレーションを与えていたことを実感しました。これからも、緒方さんの考えを引き継ぎ、信頼で世界を繋いでいきたいと思います。」とまとめました。

 

シャンティは、本シンポジウムでの対談をふまえ、緒方さんが現代を生きる私たちに残した思いを忘れず、平和な社会の実現に向け更に努力していきたいと思います。

 

独立行政法人国際協力機構(JICA)ウェブサイトにて、本シンポジウムのアーカイブ配信をご覧いただけます。パネリストの略歴もこちらをご参照ください。

 

担当 広報・リレーションズ課 梶ヶ山 薫