2013.05.21
読み物

難民帰還は2015年以降?

スタッフの声
ミャンマー(ビルマ)難民キャンプ

こんにちは。ミャンマー(ビルマ)難民事業事務所の小野です。

今年はじめに米国へ定住したメラ難民キャンプ委員会の元委員長だったトゥントゥンさんがこんなことを言ってました。

「難民帰還が本格的になるのは2015年以降じゃないかな」

政治を語るのが大好きだった彼が、ひとつ教えてくれた理由は2015年にミャンマー(ビルマ)国内で総選挙があるということ。それまでには武装勢力が政党化する、帰還した難民が有権者となる、難民出身の議員も出るなど、「政治家の視点」もありそうですが、実際は、総選挙も2回目ともなると、民主化が一段と安定して、庶民も疑心暗鬼な状態が去り、難民問題の解決も本格化する、ということなのかも知れません。

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(向こうがミャンマー、こちらがタイ。既に入国は多様化。)

2015年と言えば「アセアン共同体」の創設もありました。その年から、アセアン加盟国は、①経済、②政治・安全保障、③社会・文化の3分野からなる包括的な共同体になるわけです。これにしたがって、各国では、貿易、投資、 サービス、インフラなど各分野の規制緩和、規格や標準の共通化、インフラの整備などが進められており、隣国同士のミャンマー(ビルマ)とタイでも独自の関連協定などが結ばれています。

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(メーソット空港。9月モーラメイン行、10月ヤンゴン行就航?!)

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(同上。メーソット「国際」空港準備中。)

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(ノックエア。鳥のように国境も越える。)

また、2015年に先駆けてミャンマー(ビルマ)政府は、今年12月東南アジアのオリンピック祭典「SEA GAME」の開催国、続いて来年ASEAN議長国を担当。国際的な信用を確保しながら、主要都市のインフラ整備、人的資源の強化も急ピッチで行います。
アセアン共同体と難民帰還の関係は如何に?いろいろと切り口はありそうですが、まず、紛争問題、難民問題を加速的に解決しないとミャンマー(ビルマ)国内のみならず、共同体としての発展に進めないということに尽きると思います。全体的には少数民族武装勢力との紛争はいまだ解決しませんが、そんな中でも現在停戦合意、和平交渉中のKNU(カレン民族同盟)との関係改善はやはり政府にとって優先順位は高く、そこには国内避難民や難民の帰還も含まれてくるはずではないでしょうか。

一方、タイ政府は、労働人口200万とも300万とも言われる、ミャンマー(ビルマ)からの移民労働者の入国手続きを簡素化し、また労働者の最低賃金を値上げするなど、合法的な移民を歓迎する方策をとっています。とは言え、タイに残りたい難民がいたらそのまま労働者として受入れ・・・とは行かないようです。

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(ミャンマーから来る客で賑わう大型スーパーもオープン。)

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(キャンプ内は土地が狭く、住居も山に登る?)

タイ政府による難民キャンプに対する直接的な動きとしては、王室系財団として有名なメーファールアン財団がUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と共同で帰還を前提とした「難民登録」作業を開始します。既にパイロット事業としてあるキャンプでは、青年ボランティアと共にコミュニティの詳細地図づくりワークショップが開催されました。今後、できた地図は戸別聞き取り作業の有効なツールになります。住民の中には難民登録も何もされていない人も多いので、すべての住民をきちんと登録することで、定住地への住民登録もスムーズかつ安全に実施されることが期待されます。

NGOとしても、UNHCRと協力しながら、定住地を中心にミャンマー(ビルマ)側の経済社会の情報を紹介し、そこでの生活再建のプロセスをできるだけ具体的にイメージしながら、とりわけ職業的及び教育的な再統合に関する準備をお手伝いすることが求められています。SVAもコミュニティ図書館という立場から、より有益な情報提供サービスを目指します。

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(図書館員研修の図。将来本国で図書館司書になってたらすごい!)

こうして、難民キャンプの内外の状況を見ると、難民帰還が本格化するにはあと数年かかりそうで、やはりトゥントゥンさんの「2015年以降説」は正しいかも知れません。しかし、既に自主的に戻っている人もいる今日この頃。果たして今後、どのようなペースで帰還の波が起こってくるのやら・・・。

難民帰還の歯車はすでに音を立てて回り始めました。SVAも状況把握のアンテナをピーンと張りつつ、彼らの声に耳を傾けながら、その時々の時流にあった住民図書館サービスを実施する必要があります。

新フェーズに入った図書館事業、今後とも、注目して頂ければ幸いです。

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(図書館研修を終えて。図書館は国境を越える!)

以上

PS 今年12月ミャンマー(ビルマ)開催のSEA Gameテーマ曲が既にYouTubeに出ています。
伝統楽器の竪琴を使ったドラマチックな曲。ミャンマー(ビルマ)の意気込みを感じる?

http://www.youtube.com/watch?v=LCZB37lyYNM