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2023.10.04
開催報告

【開催報告】9/13オンラインイベント「忘れないで、アフガニスタン。~女性の課題に取り組む複数のNGOの視点から~」

アフガニスタン
イベントレポート

2021年8月15日、タリバンがアフガニスタンを実効支配してから2年が経ちました。

現地では、政情不安が高まる中、経済危機と食料危機が相まって、人々は苦しい生活を強いられています。特に、女性の権利や女子教育への制限については、世界中で懸念が広がり、多くの支援団体等が緊急対応に奔走しています。

シャンティは、政変以降も教育支援や人道支援を可能な範囲で実施し、アフガニスタンに寄り添い続けてきました。以下、政変後に実施した一部の活動の紹介となります。

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そんな厳しい状況が続くアフガニスタンですが、日本を含む国際社会からの注目度は年々減少傾向にあります。「アフガニスタンのことを忘れないでほしい!」そんな思いから、シャンティの加盟するJANICのアフガニスタンワーキング・グループは、政変から2年が経った現地の状況やNGOの活動を伝えるべく、オンラインイベントを開催しました。このイベントには、女性や女の子たちを支え続ける日本のNGO団体とジェンダー法学の専門家をお迎えしました。

イベント当日の登壇者及び運営の様子。左からPWJ牛田さん、NFUAJ芦田さん、SVA喜納、JEN松浦さん、REALs鳩さん

以下、登壇者とイベント内容のまとめとなります。


【登壇者】

鳩 織江 特定非営利活動法人 Reach Alternatives (REALs)  アフガニスタン事業担当

一般企業を経て2022年に事業アシスタントとしてREALsへ入職。以降アフガニスタン事業に従事し、主に食料支援と退避・保護支援事業に携わる。2023年6月より現職。

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松浦 晃子 特定非営利活動法人 ジェン (JEN)プログラムオフィサー

一般企業での勤務経験を経て、アフリカで次世代を担う女性リーダー育成プログラムに従事。2020年6月より現職。アフガニスタンを中心に、パキスタン、トルコ等での自立支援に携わる。

喜納 昌貴 公益社団法人シャンティ国際ボランティア会 (SVA) 調整員兼アフガニスタン担当

院生時代に英語教師としてミャンマーでインターンシップを経験。大学院修了後、帰国し公立中学校で勤務。2022年4月より、シャンティ国際ボランティア会で海外緊急人道支援担当し、2023年3月より現職。

清末 愛砂 室蘭工業大学大学院教授(憲法学、ジェンダー法学)

山口県周南市出身。 大阪大学大学院助手、同助教、島根大学講師、室蘭工業大学大学准教授を経て、二〇二一年六月より現職。 専門は憲法学、ジェンダー法学、家族法、アフガニスタンのジェンダーに基づく暴力など。「RAWA(アフガニスタン女性革命協会)と連帯する会」共同代表。

【モデレーター】

牛田 眞也子 特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン海外事業部中東地域サブマネージャー

​大学・大学院時代、人権擁護団体でのインターンや国内にいる難民申請者を支援する全国難民弁護団連絡会議の初代コーディネーター、ユニセフ駐日事務所インターンを経て、2003年8月より現職。以来、イラク、イラン、アフガニスタン、インドネシア、東ティモール、トルコなど計12か国で東京と現場で緊急人道支援をはじめ、復興開発支援活動に従事。

芦田 崇 公益社団法人日本ユネスコ協会連盟 海外事業部長

2001年よりジンバブエ、タイ、ザンビア等にNGO職員として駐在し、保健、ジェンダー、教育、防災事業等に携わる。2023年2月より現職。

 

アフガニスタンの概況

芦田さん:政変から2年が経過した今、アフガニスタンの状況は悪化の一途を辿っています。タリバン暫定政権は、国際社会から正式な政府として認められていないため、資金援助が制限されています。その結果、政府を通した大規模な開発事業等の実施が難しくなりました。それに加えて、中央銀行の資産凍結措置が取られ、社会全体の経済活動が麻痺しています。

さらに、地震や洪水、干ばつなどの度重なる災害は、国民の生活を一層困窮させる要因となっています。現在2,900万人(人口の7~8割)が食料危機に瀕し、そのうち600万人が飢餓の一歩手前にいると言われています。

また、特に問題となっているのが、女性や女子の権利の著しい制限です。2021年8月の政変後、中等教育以上の女子教育が禁止されました。残念ながら、彼女たちが教育を再開できる目途は未だたっていません。

 

REALsの活動を通してみる アフガニスタン国内における女性の現状

鳩さん:芦田さんの説明でもあった通り、国民の約8割が食料危機に陥っています。その中でも、特に女性が世帯主である家庭の96%が食料不足と言われています。そして、29%が少なくとも1人の子どもを児童労働に従事させるという苦渋の決断を強いられています。また、男性帯同(マハラム)制度が課されているため、市場に行けない女性が37%いるとされています。

このような状況に対応するため、REALsは政変から今日までに294人の国外退避を支援しました。また、国内においても、安全確保や生活援助、医療、教育といった保護支援を700人に提供しました。

ここで、日本に退避してきた女性の声を紹介します。

「本当なら愛する祖国に残り、社会をより良くするために貢献したいという夢があった。叶わないことに怒りと悲しみを感じる。それでも、これからもできることを続けます。」

 

アフガニスタン 女性の生きる力

松浦さん:女性の社会活動に制限が課せられる中、自宅における就労は認められています。そこで、JENは、造花の製造技術を身に着けるための技術研修を実施しました。本事業の構成としては、初めに造花の製造技術を身に着けるための研修を実施し、スタートアップキットを配布します。その後、自宅で製造を請け負い、販売を通して収入を得ます。本プログラムの参加者からは、わずかながら自らの力で収入を得ることができるようになったとの声が寄せられています。

ここで、JENの生計支援事業を間近で見守った、女性職員の声を紹介します。

「今、アフガニスタンの女性にとって“働けること”は、大きな意義があります。特に、女性が世帯主であったり、夫が職を失ったりする家庭では、家族全員にとって、女性が働けることは非常に重要なことです。

自立することは、男性や大人のみならず、全ての人になくてはいけないことです。自分の目標を立て、それに向かって努力できること、それが当たり前のアフガニスタンになることを祈っています。」

 

教育分野から アフガニスタンの女の子たちの今

喜納:2001年の教育状況を見ると、特に女子児童・生徒のための教育支援は、ほとんど0からのスタートでした。2018年までの約20年間で、初等から高等教育の女子の就学率は著しく上昇しました。

2021年に起きた政変は、そんな成果が大きく崩れてしまう結果を招きました。現在、小学校の女子を含む児童数は政変前に比べると7割まで減少しています。女子の初等教育は禁止されていない一方で、女性教員数の減少により、授業を受けられない児童が増え、男児を含む多くの子どもたちが不就学の状態となっています。

特に懸念が大きいのが、女子の中等教育です。政変後の新学期当日、登校した多くの女の子たちが下校を強いられ、その後学校に戻れていません。

そんな状況が2年間続き、先日、学校に通えなくなった15歳の女の子からシャンティに手紙が届きました。

「学校に行けなくなって700日が経ちました。将来の希望が失われたのと同時に、毎日を“普通”に生きる感覚が無くなりました。悔しいのか、悲しいのか分かりません。だけど、同じ悩みを抱えているのは私だけじゃない。だから、私は強くありたい。」

彼女の手紙からは、苦境の中でも希望を失わず強くあり続けようとするたくましい姿が見られました。

教育の制限が厳しいアフガニスタンに対し、国際社会は公教育と学校外の教育、両方への支援が必要です。特に、中等女子教育に対しては、制限下の中で実施ができる多様な教育の在り方を模索し続け、それを実現するための、柔軟な資金サポートが求められます。

 

日本のNGOに努める現地の女性の声

本イベントでは、現地で活動を続ける女性NGO職員の声を紹介しました。

アフガニスタンの状況や私たちの気持ちに耳を傾けてくれる日本のみなさんに感謝します。

2022年12月に、NGOの女性スタッフの就労が禁止されてから、現場に行くことができなくなり、今は、在宅にて勤務しています。政変前は、NGO職員として働くことに恐怖を感じることなんてありませんでした。仕事を通して、多くの人の安全や生活を守ることができ、感謝され、やりがいを感じていました。それが今では、活動を続けることができず、支援を受けられない人の生活や命が危険にさらされていて、とても悲しく、そして悔しいです。

今のアフガニスタンの状況は、とても厳しく、女性を抑圧する法律がどんどん制定されています。国際社会における報道では、「アフガン女性の自由が侵害されいてる」と発信されることがあっても、翌日にはすぐに忘れられています。

日本を含む国際社会のみなさんにお願いです。どうか、自由が奪われた私たちを救ってください。今、多くの女性や女の子たちが苦しんでいます。自分や子どもたちの将来は自分たちで決めたいです。そのためには、みなさんの協力が必要です。

 

ターリバーンの復権下で暮らすアフガン女性と私たち

※本イベント全体において、暫定政権を「タリバン」と記載していますが、清末先生の発表では、「ターリバーン」と使用しているため、そのまま本名称を採用します。

清末先生:ターリバーン暫定政権が復権してから、彼らは「女性の人権」を守ると発表しましたが、その後、小出しに様々な制限を課してきました。国際社会は、このような制限に対して非難の声をあげてきましたが、ターリバーンと国際社会が考える「女性の人権」は、必ずしもイコールではないことを理解する必要があります。

そんな中、現地の女性は、命を危険にさらしながらも抗議を続けてきました。行動を続ける女性たちのスローガンには、「パン」「教育」「就労」「自由」の4つが掲げられています。注目していただきたいのは、この「パン」が含む意味です。もちろん、女性の就労が制限され収入が得られず、パンすら買うお金もないことを訴える意味合いもあります。しかし、もともと食料不足が蔓延していたアフガニスタンに対し、国際社会による経済制裁が課せられ、状況が悪化することとなった事実を忘れてはいけません。つまり、この「パン」とは、アフガニスタンの女性が国際社会に訴える強い願いでもあります。

また、アフガニスタンで起きている、女性の権利の侵害については、ターリバーンだけに注目してもその複雑な構造を理解することはできません。もともと存在していた「家父長的社会規範」の特徴や「イスラームの厳格な解釈・曲解」、それに外国からの度重なる侵略や攻撃、長期の駐留が加わりました。このような要因の重なり合いにより、女性の権利侵害を取り巻く重層的な構造が出来上がりました。この複雑な構造の理解に努めない限り、アフガニスタンの女性の問題の理解、また解決へのアプローチを試みる際に、誤った判断をすることになりかねません。

 

パネルディスカッション

イベント後半は、モデレーターの牛田さんをお招きし、登壇者によるパネルディスカッションが行われました。

 

  • Q: 公教育の機会を閉ざされた女子は私的に学ぶ機会があるのでしょうか。

喜納:CBE事業の中に速習型のプログラムがあります。対象を13歳以上の生徒としており、地域によっては本プログラムを13歳以上の女子に実施できているケースがあります。また、識字教育やノン・フォーマル教育等の学校外での教育の実施も確認されていますが、寛容性の高い地域のみに制限されています。

 

  • Q: 日本のNGOの方々は、現地での「女性差別」の問題をどのように考えていらっしゃるのでしょうか。 

松浦さん:アフガニスタンの女性たちは、ただ迫害されている弱い存在ではなく、困難の中でも生きようと努めている強い女性たちです。女性支援を実施する際には、日本の女性差別や家父長制の延長線上にアフガニスタンの女性差別があると考えないように心がけています。そのため、女性職員や支援を受ける女性の声を聴いて、それから外部の者としてできるインプットを織り交ぜながら事業形成をしています。

鳩さん:対象者が負の影響を受けないように、事業を計画・実施しています。具体的には、食料配布支援においては、男女の会場を分けたり、配布時間を変えたりしています。また、必要に応じて、個別に訪問して食料を配布することもあります。

 

  • Q: 国際機関の援助状況を教えて下さい。

清末先生:第一に、アフガニスタンに対する国際機関の資金は全く足りていません。これは、国際社会の注目度と比例するので、世界がどれだけアフガニスタンに目を向けるかが資金を確保する鍵となっています。一方で、多くの国が現地で支援を実施しています。しかし、送金に苦労しているという話をよく聞きます。他にも、子ども病院における医療支援ついて、資金が足りず、必要な治療ができない悲惨な状況が見られます。地雷でケガをした子や白血病の子など、多くの子どもが苦しんでいますが、その中でも優先順位をつけて治療しないといけない現実があります。

 

  • Q: アフガニスタンの日本へ退避している人への支援ニーズについて教えてください。

鳩さん:日本に退避したアフガニスタン人からよく聞くのは、非常に緊張感のある中で退避をして、今もその精神状態が続いているということです。そんななか、生きていくためにお金を稼がないといけないのですが、日本で仕事を見つけるのが難しく、日本語を学ぶなど、日本で生きていくためにいろいろな努力をしています。

 

  • Q: この状況を打開するための日本の政府、市民社会、日本にいる私たちができることはどんなことでしょうか。

松浦さん:現在のアフガニスタンの構図を単純化して見ないということだと思います。今、タリバンによる様々な施策が注目を集めていますが、それだけではなく、なぜそのような制限を課すのかなど、背景に目を向けることや、また現地の方の考えや想いを聞くことが重要じゃないかと思います。また、今日のようなイベントで学んだ事をご家族や知り合い、友人の一人にでもお伝えすることが、アフガニスタンのためにみなさんができることだと思います。

喜納:アフガニスタンに関わってから、「私に何ができるか」という疑問を多くいただいています。非常に遠いところで起こっている出来事のように感じてしまいがちですが、個人レベルでできることは、アフガニスタンのことを忘れないことじゃないかと思います。

また、政変以降、日本にも多くのアフガニスタン人が退避してきています。機会があれば、その人たちと関わってみることで、アフガニスタンがより近い存在になり、「自分ができること」を自分なりに見つけることができるのではないかと思います。

 

  • Q: 最後に清末先生からコメントをお願いします。

清末先生:発表の中でも紹介されましたが、アフガニスタンの女性は、抑圧され虐げられている部分も確かにあります。しかし、彼女たちは、その状況を打開するために知恵を磨いてきました。例えば、女子の学校教育が制限されている中で、学習塾や学習センターが開講されているなど、人々は学びを諦めていません。日本としてそして国際社会として、その人たちをどう支援できるか、それが重要になってくると思います。今日のNGOのみなさんのお話を聴いて、現地で諦めずに努力し続ける人々への支援に力を入れていることが分かり、大変希望を持つことができました。我々のやっていることは小さいことかもしれませんが、大きな繋がりはこのような支援を通してうまれます。

また、このように支援を続けていることやアフガニスタンの状況を日本社会の中で喚起していくことも重要です。アフガニスタンで一生懸命生きる女性たちの力を信じて、私はアフガニスタンと関わっていくし、みなさんも関わっていってほしいと思います。

 

 

以上、9/13のイベント報告でした。

登壇者の報告やパネルディスカッションからは、アフガニスタンの女性が置かれる厳しい状況、しかしその中でも知恵を磨き、そして希望を持ち生き続ける、そして学び続ける女性たちの力強さが感じられました。

シャンティは、これからもアフガニスタンに寄り添い続け、職員一丸となってできる限り支援を継続していきます。

 

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