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ミャンマーの学習観と図書館の未来

2017.5.5   ミャンマー

ミンガラーバー。

ミャンマーの公共図書館で児童向けのサービスを始めて、
もうすぐ3年、成果と課題が見えてきた時期だと思います。

ミャンマーの図書館で児童向けの絵本を配架し、読み聞かせや文化活動を実施する児童サービスの支援。
定期的に来てくれる子どもたちがいたり、徐々に図書館側の理解も高まっている一方、
なかなか思ったように児童利用者数が増えていません。

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(児童利用者数だけで成果を測るのは十分ではないというのは承知しています。一方で子どもを楽しませる活動ができていないから子どもが来ないなど、児童利用者数は質とも相互に関係する指標であり、成果を測る一つの重要な指標であると言えます。しかし今後来ている児童が図書館内でどのような経験をしているのかは細かく見ていく必要はあります。)

もちろん少ない児童利用者数の背景には、図書館の場所、図書館員の態度やサービスの質、地域の認知度の不足など複合的な要因があると理解する必要がありますが、私が個人的に大きな障壁となっていると考えるものは大人の学習観であると思っています。

子どもを持つ親にインタビューをしたとき、
図書館の役割は知識を得る場所であると答えました。
親たちは新たな知識を増やすことが図書館の役割だと答えました。
もちろん本を読んで知識を得ることは図書館の役割の一つではあります。
しかしただただ本を読むことを楽しんだり、感情的に豊かになったり、
友だちができて社交的になったり、ただただ子どもたちが図書館を居場所として認知したり、、、
図書館の役割はたくさんあると思いますが多くのミャンマーの大人(親と同時に先生や図書館員でさえも同様の見方をすることも多い)の見方はかなり限られていると感じます。

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なぜこのような見方をしてしまうのでしょうか。
それはミャンマー社会にはびこる学習観(どんな学習がよいのか)に起因しているように感じます。
以前のブログでも紹介しているように、ミャンマーで勉強することは暗記するとほぼイコールです。
今まで知らなかったことを新しいものとして暗記して自分の頭の中に知識として蓄積すること、それこそが学習とみなされます。
この学習観は歴史的に形成されてきたものですが、現在においては教育制度がその学習観をより強固なものにしているようにも感じます。というのはミャンマーの試験制度はどれだけ暗記したかをもって評価されることが多いので、その制度のもとで子供たちを評価しなければならない教師や親は暗記こそ学習と考えてしまうのです。
こういった学習観が狭い見方であると簡単に指摘できる一方で、この見方はだめだと否定することは現実的ではないように感じます。
なぜならどれだけ暗記したかで評価される教育制度の中では暗記をしていくことが、より良い専攻科目を学んだり次のステップに行くために大事になってくるからです。

以上のような学習観ゆえに、図書館内で子供たちが折り紙でヒコーキを作って遊んでいたり、
絵本の読み聞かせを楽しんで聞いていても、親たちは子どもは学んでいない、ただ遊んでいるだけだ、
と評価してしまうことがあります。

また図書館に送るくらいならテストでいい点を取らせるための暗記の塾に子どもたちを送るほうがましだと考える人もいます。(ミャンマーの塾に関しては過去の記事を参照)

ミャンマーの塾

子どもたちが自発的に図書館に来ることもありますが、
多くの場合、親が子どもを図書館に行かせるか行かせないかの選択をしています。

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このような状況の中で子どもたちが図書館に来てくれるにはどうしたらよいのでしょうか。
個人的には親の学習観に働きかけるアプローチが必要であると思います。

私が考える親へのアプローチは2つあります。
1つは追加的な学習観を持ってもらうように働きかけることです。
暗記は悪いと言ってしまうことは現実的ではないことから、
暗記もいいけど他にもこんな学習があると紹介をすることができます。
本を読めば情緒能力が発達したり、社交性を身につけることもできる、
また遊ぶこと自体も学習なんだといったことを理解してもらうのです。
こうすることで図書館に子どもをやることも悪くはないかと理解してもらいます。

次は既存の学習観に合う形で図書館の意義を説明します。
暗記をしてテストでいい点を取るためには暗記だけしているだけでは十分ではなく、
例えば小さい頃から読書をしていることが実は重要になってくると説明するのです。
読書のテストへの効果が分かるエビデンスを提示することも必要かもしれません。
そうすることで彼女たちが考える学習のために
積極的に図書館に子どもを送ってくれるかもしれません。

図書館は何かを達成するための手段ではなく、
図書館という場所があってそこに(数は多くなくても)子どもたちが来ることができるという
その事実自体が重要なのだ、という見方もあるかと思いますが、
私たちはプロジェクトをしていて、限られた時間の中で大きな成果を出す必要があります。

なかなか社会にはびこる学習観を一気に変えていくことは難しいかもしれませんが、
ローカルなレベルから学習観を変化させたり理解を変えていくことが今後の図書館活動の成否を握っているのかもしれません。

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ミャンマー事務所

山田

  • 絵本を届ける運動
  • アジアの図書館サポーター
  • 特集:35周年特設サイト