
生産者の生活を支えるだけではなくモン族の美しい刺繍、ラフ族の伝統的なパッチワークなどアジアの豊かな文化を伝えています。
始まりはシャンティの図書館に遊びに来る
モン族の女の子たちが作る刺繍でした
1985年から7年間ほど、シャンティ国際ボランティア会(シャンティ)はタイの東北部にあったラオス難民キャンプ、バンビナイキャンプで印刷所と図書館活動を中心とした援助活動に携わりました。
シャンティの作った小さな図書館には、毎日山岳民族であるモン族の子どもたちが遊びにきました。
女の子たちは6~7歳になると、刺しかけの刺繍布を持ってきて、遊びの合間に一心に刺繍を刺し始めるのです。
難民になり、民族衣装を着なくなっても、
伝統はしっかり受け継がれていました
モンの人たちは、自分たちの衣装をつくるための刺繍をずっと伝えてきましたが、難民となり普段に民族衣装を着なくなった暮らしの中でも、刺繍は子どもたちに伝えられていたのです。
モンの刺繍の伝統と技術に触れたタイのNGOが、キャンプ内で縫製の指導をはじめたことによって、彼女らは刺繍を製品化することを身につけました。
私たちはそこからクラフトを購入し、1985年に難民支援バザーを開催しました。
こうしてシャンティクラフト・エイドの活動が始まりました。
そして祖国に戻れた今、
彼女たちの刺繍は美しくなっています
そして現在も、祖国ラオスに帰還した人々が暮らすシビライ村の刺繍をみなさんにご紹介しています。
彼女たちの刺繍は、難民キャンプにいたその頃よりも美しく、模様はその当時よりもずっとバラエティに富んでいます。
難民から祖国へとたどった長い時間の中で、彼女たちの美意識が磨かれてきているような気がします。
伝統、難民生活、祖国、彼女たちを取り巻く
すべてが刺繍に映し出される
決して楽ではない日々の生活の時間の中で、彼女たちが、一針一針刺すその刺繍を見ていると、色鮮やかな曼荼羅模様に惹きいれられるように不思議に落ち着きます。
モン族の伝統、国境を越え再び戻ってきた人生、山の風、土の匂い…彼らを取り巻くさまざまなものが彼女らの手先で不思議に調和されて、刺繍に映しだされているような気がしてくるのです。
文 安井清子 (元シャンティスタッフ・ラオス山の子ども文庫基金代表・エッセイスト)